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デジタルアライズ  作者: ワニ
1章 『デイノスクスの夜明け』
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第一章8『神獣』

あれから日が暮れるまで稽古兼お金稼ぎの恐獣狩りを行い、そして報奨金を貰うため市役所に報告したら渋い顔をされた。スーツを着た小太りの中年男性に顰めっ面をされ、こう言われてしまったのだ。


「あー、申し訳ないんですけど…基本的には依頼が出されてる恐獣の駆除しか、報奨金は出さないことになっています」


「そ、そう、か」


「掲示板かスマホで確認できるはずですが…とにかく、次からは確認してから来てください。すみません」


これは確認していなかったディノス側に落ち度がある。まあ確かに、よく知っている粗暴で荒くれ者の集うギルドに対して、この『市役所』という施設はあまりにも清潔すぎる。


掃除も行き届いているし、観葉植物も綺麗だし、そもそもこの時間に酔っ払いが一人もいない時点で自分の知っている常識が通用しなさそうだとは思っていたが案の定だった。

ディノスはしょぼしょぼと立ち去る準備を…


「ん、どうしたのさね。何かあったのかい」


後方から美しく透き通った、鈴の音のような声に釣られ、ディノスは思わず振り向くと…

そこにいたのは見る者全てを見惚れさせるほど美しい、蒼と白と水色の三色で構成された鹿型のドラゴンのような神獣であった。2、3mほどの背丈でディノスたちを見下ろしている。


「ア、アルゼイドさん、何用で?」


「さん付けはおよし、呼び捨てでいいんだよ。あたしはメルセルの代わりにオルピアの付き添いに来ただけ。強化飛行機の開発のプロデュース、だったかね」


アルゼイドと呼ばれた美しい神獣はその見た目に反して意外にも姉御肌であり、サバサバとした性格な様子。彼女はクリスタルを備えたような長い尻尾で自分の頭を掻き、「で、」と話を進めると


「あんたたちの方は何かトラブルでもあったのかい?」


「いや、心配してもらってるところ悪いが、オレがやらかしただけだ」

「こちらの方が恐獣を退治してくれたんですが、依頼の出ていない恐獣の討伐には報奨金を出せなくて…有り難くはあるんですが、こちらもお金がなく」


「ふぅむ…」


ディノスと職員のそれぞれの答えを聞いたアルゼイドは、その深緑の瞳を瞑り解決策を考え、そしてこう発言した。


「お金が足りないのなら、いっぱい作ればいいんじゃないのかい?」


「それはダメだと思う」

「国の経済が破綻しますね」


「えぇ、ダメなのかい!??」

これだ、とばかりに発されたアルゼイドの渾身のアイディアは一瞬にして二人に否定され、神獣とは思えないくらい俗物な彼女は驚愕の表情を見せてきた。。


彼女は落ち込んだこの気持ちをブンブンと頭を振り回して雑念ごと振り落とし、別のアイディアを披露する。


「じゃ、じゃあ!あたしたち『彗星協会』が依頼を出したってことにするよ。そしたらみんなハッピーだろ?」


「それはそうですが、お金は…」


「そりゃもちろん、あたしのポケットマネーからだね!」


アルゼイドはどこからか取り出したのか財布を尻尾で取ると、何も手を動かしていないのに勝手に財布が開き…否、速すぎて見えなかっただけで前足を使ってお金を取り出したようだ。


四足歩行ではありえない挙動を見せられ、困惑するディノスに、アルゼイドは尻尾で札束を掴んで渡してきた。


「あんた、最近来た新入りだろ?受け取りな、でも今回だけだよ!」


「い、いいのか?いやでも………せ、せめて返すために連絡先を…」


「返さなくていいんだよ。そう思うならそうさね…今度はあんたが誰か困ってる人を助けてやりな。助け合いの連鎖が起きれば巡り巡ってあたしにも恩恵が来るからね」


霜獅子などなかなか強い個体もいたとはいえ、基本的にはゴブリンなど弱い恐獣しか倒さなかったってのにこの額はいくらなんでも多すぎる。ディノスは受け取れないと断ろうとしたが、ほぼ無理矢理握らされてしまった。


 「じゃ、こう見えてあたしも忙しいんだよ」とアルゼイドは帰り支度を始めた、が…


「ま、待ってくれ」


「ん」

ディノスは思わずアルゼイドを呼び止めると、


「オレはディノス。この恩は必ず返す、ありがとう」


そう言われた彼女は少しだけ驚いた素振りを見せたが、すぐにいつもの高潔さを取り戻し、ふふんと鼻を鳴らしてこう答えた。


「あたしはアルゼイド。——よい一日を」


—————————————————————-


あれから住民票の手続きなどを終えて市役所を出る頃にはもう完全に夜となっていた。ただし街灯が山ほどあるため、そこまで暗さは感じない。


…まあ、別に明かりがなくてもそんなに苦労はしないが。


「さぁ、ここに何かヒントがあるかもしれん」


さて、ディノスが今いるのはネットカフェ。彼はそこで受付を済ませ、パソコンと向かい合っているのだ。ただ暇つぶしでネットサーフィンをしよう、というわけではない。


「オレ、いや…オレたちはゲームの世界から来た。ならば、実際その元になってるゲームがあるはずなんだ」


慣れないパソコンを手繰り探りで使いながら、検索エンジンに『モンスターパートナー』と入力する。ディノスとラクールの設定、そした来た時代など、諸々を照らし合わせて法則性を見つければアルマを探す上でヒントになり得る…………はずだった。


「——検索結果、ゼロ…?そ、そんなはずはない」


何度もマウスをカチカチとさせ検索し直すが、何度調べても無駄。その他の検索結果も調べてみるが、全く関係のないウェブサイトしか出てこない。


「名前が間違えてるだけ、だろ」


モンスターパートナーという名前自体が誤りな可能性もある。ならば個人名で調べてみる。"ディノス"、"アルマ"、"、その他諸々…ダメだ、何も出てこない。


「…」


本当はオレたちはゲーム世界から来てないんじゃないか、と言おうとしたが…………あまりの衝撃に言葉も出ない。ディオラやアルゼイドで検索したらゲームと共に一発で出てきたのだ。本当にディオラは抜けない女とウェブサイトに書かれていたが、そこはどうでもいい。


「ど、どうなってるんだ…これは」


ディノスは画面の前の不可解な現実に対して、硬直することしかできなかった。

立ち絵資料

挿絵(By みてみん)

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