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【祝四周年】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十二章

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凶悪なクマ1


「んで、ゼリマン領をかすめて、カーマイン領に至る道に行くってわけか」


「旧街道……らしいな」


 ジケたちはシュトレイブルを出発していた。

 今は馬車の中にいるリアーネは、流れていく景色を眺めている。

 

 どうにもゼリマンの状況も良くない。

 おそらく何も限りは言い逃れができるように圧力だけかけて終わりだろう。

 

 しかし何もないと言い切ることもできない。

 ただカーマインに続く道も繁殖期の魔物の領域のど真ん中を通るために危険がある。

 

 そこで第三の道を行くことにした。


「旧街道って今は使われてないんだろ?」


「らしいな。ただそれでも時々通る人はいるらしいし、通れないわけじゃないみたいだな」


 今はシュトレイブルからカーマイン、ゼリマンに直接向かう道があるが、昔は一度ちょうど間ぐらいに向かってそこからカーマイン、ゼリマンそれぞれの方に分岐する道があった。

 旧街道と呼ばれていて、直接行く道に比べて遠回りになるため段々と使われなくなってしまったのである。


 使う人も少なく、若者ではもはや存在も知らないような人もいるような旧街道を通ることをメクシトロから提案された。


「魔物のナワバリもかすめるらしいけど……だいじょびなの?」


「リスクはあるけど、今は何しても、何しなくてもリスクだ。なら行くしかないよ」


 ジケたちと共にゲルシトンとバハナイを含めて五人の兵士が帯同している。

 旧街道を進むとゼリマンの領地に少し入ったところで、ゼリマンの都市に向かう方とカーマインに向かう方で道が分かれる。


 ジケたちは旧街道を通ってカーマインに向かおうとしていた。

 ゲルシトンたちは護衛兼カーマインへの伝言係。


 助けを求める使者として向かっていた。

 ただそれだけではない。


 旧街道もカーマインへ向かう道で問題となっている繁殖期の魔物のナワバリをちょっとかすめる形となっている。

 だから精鋭を集めて少人数で速度を速めつつ、魔物と戦いになってもいいようにしていたのだった。


「二人は大丈夫そう?」


「あ、ああ、はい!」


 やや早足の移動。

 アマーチとメソラは馬でなんとかついてきている。


 不便をかけるが、馬車にも乗れる限界があるのでしょうがない。


「で、なんだっけ? ベルデス……とかいう魔物が繁殖期になるんだっけ?」


「なんかこう……おどろおどろしい名前だねぇ」


「どんな魔物なんだろね?」


「ピコちゃんの予想ではでっかい口があって、手が何本もあって、すごくおっきいんだよ!」


「……どんな姿だろね、それ?」


 女の子三人でベルデスという魔物について想像を膨らませる。

 こんな緊急事態であっても通行を避けるというほどの魔物はなかなかいないだろう。


 逃げるように通り抜ける、倒すと方法はあるだろうに繁殖期が終わるまで触れないというのなら、魔物も相当強いのだ。


「聞いた話では……案外ピコちゃんの予想も遠くないな」


「ありゃ、そうなの?」


「でっかい口とたくさんの手とすごいおっきい?」


「ああ、ざっくりといえばそんな感じになる魔物だな」


「結局分かんないんだけど?」


 みんなの頭が疑問でいっぱいになっている。


「俺も聞いた話だけど、クマみたいな魔物だそうだ」


「クマ……」


「まあ、確かにデカいわね」


「ただし……」


「ただし……? ゴクリ……」


 ピコの相槌は上手く話を引き出してくれるものだとジケは思う。


「手が六本あるそうだ」


「手が六本……」


「それだけたくさんあったらお団子作るのも楽そうだね」


「そういう問題?」


 ミュコは素直に驚いてくれる。

 ピコは若干視点がズレていて、エニは案外冷静だ。


「体格的には普通のクマよりデカくて、腕六本、もちろんクマだから口もデカい」


「流石ピコちゃん……予想大当たりだね」


 当たらずとも遠からずといったざっくり予想だったが、当たりといえば当たりなのかもしれない。


「当たったんだから褒めるべきだとピコちゃんは思うんだよね」


 ピコはミミをペタリとさせて頭をジケに差し出す。


「ほれ、大正解」


「むふー」


「なんでこっち見るのかな?」


「ピコちゃんズルイ!」


 ジケが頭を撫でてやると、ピコはエニとミュコのことを得意げな顔をして見る。

 この小さな馬車の中も三国で一触即発だなとジケはひっそりと思っていた。


「失礼します。もう少しでナワバリ近くになります」


「分かりました」


 ゲルシトンが馬車の横に馬を近づけて声をかけてきた。

 今回ゲルシトンはジケたちに同行することに不満を抱えていた。


 自分も残って戦う。

 そんなことを言っていたのだけど、援軍を連れてくるまで帰ってくるなと言われて送り出された。


 メクシトロの気持ちもゲルシトンの気持ちもわかる。

 クリストフが捕らえられている以上、ゲルシトンも大事な跡取りである。


 援軍なく孤立無援なシュトレイブルにいるのは危険が大きい。

 カーマインの助けが得られるなら戻ってくることもいいが、助けがないならそのままカーマインに留まって生き延びろというのだ。


「周囲の警戒頼みますよ」


「……はい」


 それでも援軍を呼んでくることは大事な仕事だ。

 命令ならば断ることもできない。


 ならばさっさと行って、さっさと帰ってくる。

 これに尽きると、なんとか自分を納得させて頑張っている。


 ジケも板挟みで大変である。

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