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【祝四周年】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十二章

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緊張逃避行4

「まさかだけど、お前ら俺たちをシュトレイブルに引き渡すつもりじゃないよな?」


「…………」


「おい、答えろよ!」


「またツンツンするよ?」


 だいぶシュトレイブルまで近づいてきた。

 ここまで来てようやく自分たちがどこに連れて行かれようとしているのか、偉い奴の息子は気づいたようだ。


 今更何言ってるのかとため息を漏らしてしまいそうになる。

 クリストフといい、次世代の奴らは結構危なそうだとジケは思ってしまった。


「……シュトレイブルだけはやめてくれ! 親父に殺されてしまう!」


 繭状態で地面に転がされた偉い奴の息子は、クネクネと体を動かしてジケに詰め寄ろうとする。

 もうシュトレイブル領地だし、実際に町までも目の前だし何を言ってるんだ、と呆れ返ってしまう。


 他の捕虜たちは気まずそうにしている。

 実際のところ気づいていなかったのは偉い奴の息子だけだったようだ。


「しょ、商人と言ったな! なら交渉しよう!」


「しない」


 もう相手にするのも面倒すぎる。

 ジケはほとんどため息のように答える。


「金なら払う! だからせめてシュトレイブル以外に引き渡してくれ!」


「ここまで来て、どうされると思ってたんだよ?」


 命乞いをするには遅すぎる。

 散々偉そうな態度を取っていたために好感度も低くて、助けてやろうと思う気力すら爪の先ほど湧いてこない。


 仮にクリストフがシュトレイブルを継ぎ、こいつがドカナイで偉い奴になったら両方崩壊するんじゃないかと思ってしまう。

 互いに止まらない勘違いで生きている点で、均衡は取れていると言えるのかもしれない。


「ジョーリオ、頼む……」


「むごぉっ!?」


 命乞いでもうるさい奴だ。

 仕方ないので糸で口を塞いでもらう。


「すごい人もいるもんだね」


「ふごーっ!」


 ピコは枝で偉い奴の息子をつっつく。

 この場合のすごいというのは、文字通りのすごいではない。


 どうしたらそんな思考回路に至るのか。

 それが全くの謎であるという意味ですごいと言っているのだ。


 どこかでドカナイから助けが来るとでも思っていたのか、あるいは本当にイルヒッコクは通過するだけとでも思っていたのか。

 世界が都合よく自分を中心にして回っているとでも考えていたのだろうとジケは結論づけた。


 その後も何回かフゴフゴ言っていたが、フゴフゴするたびにピコに突かれていたら何も言わなくなった。

 ついでにオデコの真ん中がつつかれすぎて、赤い点になっている。


「誰か近づいてくるね」


 すっかり日が落ちて、周りは焚き火の光が届く範囲でしか物が見えないぐらい。

 ようやく偉い奴の息子が大人しくなって、そろそろ寝ようと思っていたピコのミミがピコピコ動く。


 獣人であるピコは聴力も鋭い。

 ピコが何かを察知したということは、聞き間違いではないだろう。


 ジケたちは焚き火を囲むようにして警戒を強める。

 いざとなれば人質にするのに偉い奴の息子は近くに置いておく。


「ゲルシトン!」


「おじい様!」


 もしかしたら偉い奴の息子を助けにドカナイから来た奴らかもしれない。

 そんな緊張の一瞬だったが、馬に乗って近づいてきたのはメクシトロであった。


「どうしてこちらに?」


「お客様を運んできてくれているのに迎えぬわけには行かないだろう」


 メクシトロは兵士と馬車を連れてきていた。

 先に到着したバハナイから報告を受けて、捕虜を連れたジケたちを迎えにきてくれたのである。


 わざわざメクシトロが来てくれるなんて、本当にフットワークの軽い人だと感心してしまう。

 そして偉い奴の息子はゲルシトンは知らずともメクシトロは知っているようで、顔を真っ青にしている。


「お久しぶりです。問題は解決なさったようですが……また新たな問題が発生してしまいましたね。巻き込んで申し訳ございません」


「いえ、大丈夫ですよ」


 馬から降りたメクシトロはジケに頭を下げる。

 ただ謝られても悪いのはメクシトロやシュトレイブルではなくドカナイの方なので、責任を追及するつもりは一切ない。


「彼らはこちらに任せてください」


 連れてきた馬車に乗っている人はいない。

 座席もない箱だけの馬車を持ってきた目的は捕虜を輸送するためのものだった。


 兵士によって捕虜たちが馬車に放り込まれていく。


「状況はどうなっているんですか?」


 もう戦争が起きているのか。

 ジケは少し緊張しながら重要な問題について訊ねる。


「まだ大丈夫です。バハナイから聞いて警戒を強めていますが、今のところ相手にその兆候は見られていません」


「それはよかった」


 ジケはホッと胸を撫で下ろす。

 まだ戦争が始まっていないなら逃げられるチャンスはある。


「相手の動きを注視し、探りを入れています。今ならまだ戦争になる前にお帰りできることでしょう」


「ええ、そうさせてもらいます」


 戦争に参加するつもりなんてない。

 詐欺師問題は一応の解決を見たし、できるならさっさと帰りたい。


「ゲルシトン、お前はこのままフィオス商会のみなさまを案内しなさい」


「……分かりました」


 ほんの一瞬ゲルシトンは不満そうな顔をした。

 戦争が起こるかもしれないのにどうして、という気持ちがあった。


「お前を信頼していないわけじゃない。むしろ逆だ。最後まで責任は取るものだ」


 ジケたちの案内役をゲルシトンは任された。

 任された仕事は最後まで遂行する。


 これもまた責任というものだ。


「我々はこのまま捕虜を移送します。フィオス商会の皆さまは朝を待ってから移動なされるとよろしいでしょう」


 メクシトロたちは揺れる馬車を率いてすぐに元来た道を戻っていった。

 普通の馬車に乗せられ、あの速度で移動したら中の人は辛いだろうなとジケは思った。


「ようやく静かになるね!」


 ピコは焚き火に持っていた木の枝を放り込む。

 ひとまず捕虜がいなくなって一安心なのであった。


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