詐欺師の目的は8
「あの……! こんなことお願いできる立場じゃないんですけど……助けてください!」
「おい! 余計なことを……」
「リアーネ!」
「おりゃ!」
「ぐほっ!」
偽ジケが懇願するようにジケのことを見上げる。
その様子を見て、鼻が痛々しいことになっている男が偽ジケのことを睨みつけるので、リアーネに黙らせてもらった。
「ユディット、彼らを岩の向こうに」
「分かりました」
偽ジケたちはドカナイ戦士と言い争っていた。
何が起きているのかは知らないけれど、仲間割れっぽいことが起きているのは確実だ。
ドカナイ戦士と偽ジケたちを話しておく。
何か話してくれそうな雰囲気が今のところ偽ジケたちにはある。
「あいつらの声は聞こえるかもしれないけど、こっちまで来られない。なぜ助けてほしいのか教えてくれる?」
フィオスはアートスに乗っかって器用に一緒に転がってきている。
ジケが優しく声をかけてみると、偽ジケは偽リアーネと一度視線を交わす。
「……ユディット、彼を戻して」
「はい」
二人はなんとなく偽ユディットのことを気にしている。
それを察したジケは偽ユディットを岩の向こうに戻す。
「……僕はアマーチ。僕たち、急に仕事しろって言われて……」
偽ユディットがいなくなると、偽ジケのアマーチが話し始めた。
「仕事?」
「僕は元々、エディゲストラス様の使用人だったんだ……だけどなんかフィオス商会に似てるとか言われて、アートスが青く塗られて……あちこち行かされたんだ」
「エディゲストラスはドカナイの貴族です。うちの領地にも近いところに所領を持ってる好戦的なやつです」
ジケの視線にゲルシトンが答える。
「メソラさんも同じで、わけわかんないうちに色々やってたけど、だんだん理解してきたんだ」
偽ジケがアマーチ、偽リアーネがメソラというらしい。
「フィオス商会っていうところの名前を使って、ガタガタの馬車を売りつけてるって……」
「あの小太りの男は?」
「あいつはトウアク。馬車を売りつけたり、どこにいくかはあいつが決めてた。僕たちには拒否権もないし……逃げたら殺すって……」
「うーん……」
なんだか想像していたのと違うな、とジケは思った。
偽ユディットであるトウアクが偽フィオス商会の三人の中のリーダーであるようだ。
それどころかアマーチとメソラは、ただ見た目だけそれっぽくするために連れてこられただけなような感じである。
つまり詐欺はやらされていた行為ということになる。
「なんでこんなさせてられていたのか、知ってるのか?」
アマーチは再びメソラと顔を見合わせる。
知ってるようだけど、言いにくいみたいだ。
「僕たちを、助けてくれますか? どこも行く当てがなくて」
「助けるなら話すってこと?」
「……はい」
アマーチは頷く。
「……真面目に働く?」
「はい! 僕もメソラも真面目さだけが取り柄のようなものです! なんでもします!」
「じゃあ俺のところに来なよ」
「ジケ、いいの?」
「ん? まあ、こっちくれば色々やってもらえることはあるからな」
ドカナイの人である二人をシュトレイブルで引き取るのは難しいし、馴染むことも大変だろう。
ジケのところでは色々仕事がある。
どうせなら詐欺で迷惑かけられた分、働いて返してもらおうと思った。
「ありがとうございます!」
「ただし! くだらない情報なら話は無しだからな」
これでエディゲストラスのお小遣い稼ぎです、なんて話ならドカナイの戦士たちとシュトレイブルに連行して後はお任せコースになる。
「……くだらなくは、ないと思います」
「教えてくれ。ドカナイは何をするつもりだ?」
「……戦争です」
「なに?」
「ドカナイはイルヒッコクに大規模な攻撃を仕掛けるつもりなんです」
衝撃的な、密告だった。




