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【コミカラ二巻出たよ】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十二章

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詐欺師の目的は4

「ジョーリオには負担かけるな」


「いえ、これぐらい良い運動みたいなものですよ」


 馬車と呼んでいるが、ジケたちの馬車を引くのは馬ではない。

 今はユディットのジョーリオが引いてくれている。


 詐欺師を追いかけるためには早めの移動が大事なので、いつもよりも速度を上げてもらっていた。

 揺れが少ない馬車ということで、引っ張る方にも多少負担が少ないようにはなっている。


 ただやはり荷物も乗っている馬車を引っ張るのは、楽なことではないだろう。

 それでもジョーリオの八本の足は力強く地面を踏み締め、道を走っていく。


 すれ違う普通の馬車がジョーリオが引く馬車を見ると、結構驚いたりしていることはあるものの、それもまたご愛嬌である。


「でも確かに……詐欺師の目的ってなんなんだろな」


「詐欺師の目的?」


「お金じゃなくて?」


「金が目的だろうけど……金を集める目的ってのかな?」


 馬車一台分のお金でも結構な金額になる。

 それで遊んで暮らせるわけではないが、詐欺の情報を聞くに結構な数で詐欺を働いている。


 詐欺で騙し取った金額も総合するとかなりのものとなるだろう。

 詐欺なんてやればやるほどリスクは高まる。


 離れた地からドカナイが怪しいとバレるほどなのだから、もうすでに詐欺としてはやりすぎといえる領域であった。

 賢いやつなら金だけ持って逃げているだろう。


 だが詐欺師たちはドカナイを中心にして詐欺をまだ続け、さらには騙すのを失敗したら金を強奪するという手段にまで出ている。


「そんなに金集めて何するつもりなのか、って気になってきたんだ」


「確かにね」


 よほどバレない自信があって、詐欺を続けているのかもしれない。

 あるいはよほどお金が必要なのか。


 お金が必要だとしたらなぜお金を必要としているのか。

 疑問は尽きない。


 誰も答えてくれる人はいない。


「そこんところも詐欺師とっ捕まえて聞き出してやろうね!」


 ピコはあたかも自分が捕まえるというように腕を曲げて、力コブを作ろうとする。

 しかしピコの細腕にモコっとした力コブができるはずもなかった。


「まあ、そうだな。全部詐欺師捕まえてからだな」


 詐欺師を捕まえれば解決できるだろうし、詐欺師が捕まらなければ諦めるしかない。

 つまりは詐欺師に追いつけるかどうかにかかっているのだ。


「待ってろよ……俺たちの名前名乗ったこと、後悔させてやるからな」


 ーーーーー


「一つ聞いてもいいですか?」


「自分に答えられることなら」


 夜、焚き火を囲む。

 この時間には人の上下もない。


 ジケは隣に座るゲルシトンに声をかけた。

 行動を共にして三日経ったが、ここまでゲルシトンの性格は好ましいとジケは感じていた。


 移動中特に私語はなく、野営の準備も文句は言わずに率先して行う。

 どこかのボンクラなら文句を言うか、全く手伝いもしないかもしれない。


 どちらが人間的に優れているか短い間でも分かる。


「なぜあのボンクラ……弟の方が可愛がられているんですか?」


 大体後継者というのは兄の方がなるものだ。

 こうした仕事を任されるならゲルシトンの実力も低くはないはずで、ジケに負けるほどのクリストフの実力では選ばれるような圧倒的なものがあるとは思えない。


「……自分は…………母によく似ているんです」


 答えにくいなら答えなくてもいい。

 ジケがそういう前に、ゲルシトンは少しのためらいを見せつつ答えた。


「シュトレイブルは大きな貴族です。ですが政略結婚などは特に考えるようなこともありません」


 貴族同士の婚姻といえば、家同士の婚姻でも言い換えることができる。

 権力的な結びつきや実利に基づく関係を築いたりと、当人の意思以上の裏があることも珍しくない。


 だがシュトレイブルは、そんな風に実利ばかり重視しなくともやってこれていた。


「父と母は恋愛結婚でした。パーティーで出会い、父が積極的にアピールをしたと。そして二人は結ばれ、自分が生まれました」


「素敵ですね」


 しがらみも多い貴族で、純粋な恋愛結婚がちゃんと成立するのは意外と難しい。

 パージヴェルやルシウスも恋愛結婚だが、そんなもの家も力があって本人にも力があるから押し通せたところだってあるのだ。


「しかし幸せもそう長くは続かなかった。母は出産を機によく体調を崩すようになりまして、そのまま自分が小さい頃に亡くなりました」


「それは……お気の毒に」


「自分もですが、特に父は深く悲しみました。そして……自分に辛く当たるようになりました」


「……どうしてそんな?」


「母に似ているからです。成長するにつれ、母に似てきて面影の残る自分を見ると、母のことを思い出してしまうのでしょう」


 ゲルシトンは焚き火の炎を見つめている。


「クリストフの母親は家の後押しも得て後妻の座に収まり、クリストフが生まれました。母親に甘やかされて育ったあの子ですが……母を思い出すことなく、辛く当たることもなく接することができるのがいいのかもしれません」


 どこか達観したような目をしたゲルシトンは少し寂しげにも見えた。

 愛しい人を思い出してしまうから。


 それでケリステンのクリストフ甘やかしも、クリストフ自身のやらかしも正当化できるものでもない。

 しかしちょっとだけ事情は理解した。

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