詐欺師の目的は1
「さあて……どうなるかな?」
ジケはベッドの上でアゴの下にフィオスを敷いて寝転んでいる。
アゴがほんのり冷たくて、ポヨンポヨンとした感触が気持ちいい。
「昼間からいいご身分ね」
「おひょー!」
「わー!」
「ぐひょっ!?」
ジケの部屋にエニ、ピコ、ミュコが入ってきた。
ピコとミュコはジケが寝転ぶベッドに飛び込んで、二人してジケを下敷きにする。
ピコの頭がお腹にヒットして、ジケは変な呻き声を上げてしまう。
「はっ!? だいじょび?」
「だいじょびない……」
ジケたちはいまだにシュトレイブルが用意してくれた家にいた。
「向こうから何か連絡は?」
「まだ数日だしな。そんなに早いことは期待してないよ」
フィオス歌劇団の公演も終わった。
クリストフの問題も解決したので、シュトレイブルに留まる理由はないはずだった。
しかし今は留まる理由があるのだ。
クリストフの問題で補償をすると言われたのだけど、ジケは別の要求をしていた。
どうにもドカナイという国が危なそうなことが分かった。
もしかしたら詐欺師もただの詐欺師ではないのかもしれないとすら、うっすら思い始めているぐらいだ。
「それでも調べてくれてるみたいだし、気長に待つしかないな」
だからジケはシュトレイブルに詐欺師探しをお願いした。
ドカナイに乗り込まないで詐欺師を捕まえられるのならその方がいい。
まだ詐欺を働いているのなら可能性は十分にある。
周辺に土地勘のないジケたちがいかに足を使っても、情報を集めるのに限界はある。
シュトレイブルならば情報力もあるし、詐欺師の足取りをキャッチしてくれることも期待できた。
「フィオスいただき!」
「あっ、ピコちゃんも狙ってたのに!」
ミュコがフィオスを取り上げる。
「朝ごはんできてるってよ」
「おっけ」
ジケはまだちょっと鈍い痛みのあるお腹をさすりながらベッドから立ち上がる。
「こらこら……伸びるから引っ張らない」
ミュコとピコがフィオスを取り合って、引っ張っている。
にょーんと伸びたフィオスだけど、これはこれで楽しそうな感情がジケに伝わってくるのだから大物スライムである。
ワシっと掴んでフィオスを取り上げる。
「ちょっと持ってて」
少し横に伸びたフィオスをエニに渡す。
歩きながらジケは軽く体を伸ばす。
シュトレイブルの動きを待つのにジケは隙をしていた。
窓から見える街の雰囲気も、お祭りで盛り上がっていたから日常に戻っている。
「よう、ねぼすけ」
「起きてはいたよ。ただダラダラしてただけ」
リアーネはもうすでに用意された朝食をモグモグとしている。
ユディットやニノサンなんかはジケが来るまで待っているが、別に先に食べていたからと怒ることはない。
「おはようございます、会長殿」
「おはようございます。そろそろ歌劇団も帰りますか?」
ジケはニージャッドの正面に座った。
ミュコもいることから分かるように、歌劇団もまだ残っている。
後片付けなんかがあるから公演が終わってすぐに帰ることもできなかった。
加えてジケが残ることやお祭りに集まった人が一斉に帰るからタイミングをずらしたりと、いくつかの事情も重なっていた。
ただそろそろ帰る人も落ち着いている。
歌劇団をドカナイに連れていくことはないし、先に帰っていてもらってもいいかもしれない。
「そうですね。ユニコーンの弓もできているでしょうし、そろそろですかね」
「えー……」
ちゃっかりとジケの隣に座ったミュコが不満そうな顔をする。
歌劇団が帰る、となれば自ずとミュコも帰るということになる。
「こら、ミュコ、わがままはいけませんよ」
「分かってるけど……」
ミュコは唇を尖らせる。
やはりまだまだミュコ自身も自分の実力が高くないことはわかっている。
自分の身は自分で守るからついていく! と言えるほどでもないことは自覚しているので、悩ましいのであった。
どうしても踊りの練習や歌劇団周りのことが優先なので、剣の練習ばかりとしていられないからしょうがない。
とりあえず今後のことも話しながら、みんなでワイワイと食事をとる。
「申し訳ありません、ジケ様」
「ん? なんですか?」
食事を食べ終えてまったりとしていると、屋敷の使用人がこそりとジケに声をかけてきた。
「メクシトロ様がお訪ねになられております」
「メクシトロさんが?」
「お時間大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
何が分かったのかもしれない。
ジケはフィオスを抱えて別の部屋に向かう。
「どうも、おはようございます」
「おはようございます。朝からすいません」
「いえ、どうせ暇していたのですから大丈夫ですよ」
ヘスイトスはもう完全に隠居のような感じだが、メクシトロはいまだに体を鍛えて戦えるように備えている。
ケリステンが小競り合いの対象などでいない間は、メクシトロが当主代理として仕事をしているのだ。
だからメクシトロも結構高齢にはなるのだけど若々しさがある。
「今日はどうしたんですか?」
ジケとメクシトロが座るタイミングで紅茶が運ばれてくる。
屋敷に配属されている使用人はかなり高い。




