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【コミカラ二巻出たよ】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十二章

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決闘を申し込む!7

「もちろんタダではございません。フィオス商会にはちゃんと補填もいたしますし、より良い待遇をお約束……」


「断りいたします」


「……考えもせずお返事なさってもいいですか?」


 変に口を出さずにニージャッドに任せる。

 こんな引き抜き交渉なんていくらでも対応してきた経験がある。


 もし仮にニージャッドが話に乗るようなら、それを止めるつもりはなかった。

 だが、ニージャッドは最後まで話を聞くこともなかった。


「たとえどのような条件を出されようと、我々フィオス歌劇団はフィオス商会の元を離れることはありません」


「……理由をお聞かせ願っても? 息子がいたくあなたたちを気に入っております。応じてくれるのならこの劇場をあなたたちのメインとすることも考えましょう」


 ケリステンの眉がピクリと動く。

 やはりこの話はクリストフが持ってきたものだったのかとジケは思った。

 

 まともそうな父親に見えていたのだけど、息子には甘いようだ。


「多くの恩義が会長にはあります。私たちを見出してくれたこと、惜しみない支援をくれたこと、自由にさせてくれること、今も……私の判断に任せてくれています」


 お金以外のところでもジケの存在の大きさは、歌劇団の活動にも影響を与えている。

 王様の前で公演させられるならやってみろとジケは思った。


「……嘘をつくな!」


「なんでしょうか?」


 ニヤニヤとしていたクリストフだが、断れると顔色が変わった。


「あんたの娘が、こいつと付き合っているからだろう!」


「何を……」


「娘を人質に取られているのか? ならば俺が救い出してやる!」


 クリストフはポケットに手を突っ込むと手袋を取り出してジケに投げつける。


「決闘だ! あの子を解放しろ!」


 恋は人を狂わせる。

 時に犯罪に手を染めさせてしまうほどにミュコが魅力的なことは悪ではない。


 しかし普通の人はたとえ恋をしても犯罪に手を染めることはないのだ。

 まして、立場のある人間が決闘を申し込むことなんてまずしないのである。


「……クリストフ!」


「止めないでください、父上!」


 流石に決闘と聞いてケリステンの顔色が変わる。

 決闘なんて普通は路地裏の酔っ払いの殴り合いと変わらないものである。


 しかし貴族が正式にやるものには、ちゃんとした効果を持つものがある。

 周りの人が公証人となって、互いに交わした条件を遂行せねばならなくなるのだ。


 本気の約束をかけた戦いになる。

 それだけではなく、もちろんプライドだってかかってくる。


「……いいでしょう。引き受けますよ」


「会長? 何を……」


 今ならまだ引き返せる。

 ニージャッドはケリステンの制止に期待していたのだけど、それより前にジケが決闘を承諾してしまう。


「いい加減にしろよ……」


 流石のジケも本気でお怒りだった。

 不意の引き抜きに加えて、人がミュコのことを手篭めにしているかのような発言と決闘の申し込み。


 我慢の限界である。

 もちろんジケはミュコを盾に歌劇団を引き込んだわけではない。


 それに決闘でミュコを手に入れようとするクリストフの態度も非常に気に入らなかった。


「ニノサン、シュトレイブルまで走ってヘスイトスさんにこのことを伝えてきて」


「分かりました」


「おじいさまに……まっ」


 ケリステンが止めようとするが、ニノサンは光の速さで走っていく。

 フィオスがジケの感情に呼応して怒りに震える。


 今現在の不義理も怒りの原因だ。

 だが過去にミュコを追い詰めて、殺したのはこうした連中なのかもしれないと思うとすごく腹が立つ。


 過去のことは過去のこと。

 もはや手出しのできないことであるし、クリストフに対して怒りを燃やしてもそれはお門違いな八つ当たりなのかもしれない。


 でも今回はひそかに誓ったのだ。

 昇る月の美しさを陰らせてはならないと。


 大人しくしているなら何もしないが、決闘まで挑んで来るなら受けてやる。


「今日の公演は無しです」


 ジケは叩きつけられた手袋をギュッと握りしめる。

 自分ではなく、誰かのために怒る男をクリストフは怒らせてしまったのだった。

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― 新着の感想 ―
誰かの大事な人を平気で金や権力、果ては暴力で奪おうとする不義理な輩は完膚なきまで叩きのめしてプライドも粉々にへし折ってよし!! ジケくん頑張れ〜!!!
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