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【コミカラ二巻出たよ】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十二章

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決闘を申し込む!5

「なんだ?」


 クリストフは楽屋の中を見回す。

 それはいいのだけど、どこから用意してきたのか花束を抱えている。


 ざわつく楽屋の雰囲気を気にすることもないようなクリストフは何かを見つけて楽屋の中に進んでいく。

 シュトレイブル関係者ではあるものの、劇場楽屋の関係者以外立ち入り禁止の関係者にクリストフは入らない。


 ただ追い出すべきか微妙に悩ましい立場の相手である。


「君は女神だ!」


 一応部外者にはなるので、何か問題を起こしたらすぐに取り押さえるつもりで警戒していた。

 そんなクリストフは、ミュコに花束を差し出した。


 膝をつき、やや熱っぽい目をしてミュコを見上げるクリストフの態度を見れば、何を思っているのかみんなが丸わかりだった。


「え、ええと……ありがとうございます……」


 若干引きつった笑顔を浮かべながらもミュコは花束を受け取る。


「僕はクリストフ・シュトレイブルと申します。あなたの演舞を見て、とても心奪われました」


 クリストフはミュコの手を取る。


「お名前を聞いても? よければこれから食事でもどうですか?」


「…………罪な女だな」


 ジケは思わずため息をついてしまう。

 クリストフはミュコに惚れてしまったのだ。


 あり得ない話ではない。

 過去でもミュコは色々な人を魅了した。


 元々美形なミュコがステージの上で美しい剣舞を踊ると、より綺麗に見える。

 惚れ込んでしまう人は少なからず出てきてしまう。


 過去でもミュコは過激な人に惚れ込まれてしまったために命を落とすことになる。


「申し訳ありません。そのようなことはお控え願えますか?」


 ジケが介入すると角が立つ。

 今回は楽屋でのことだとし、対応に慣れているニージャッドに任せておく。


「贈り物は受付を通して、楽屋への訪問はおやめいただけるとありがたいです」


 ニージャッドは間に割り込んで、事務的に言葉を伝える。

 怒るでもなければ、言うほど注意していると言う感じも出さないようにしていた。


「なんですか、あなたは?」


 それはニージャッドのセリフだろうとジケは思う。


「劇団長のニージャッドと申します。ここは関係者以外立ち入り禁止にさせていただいております。劇団員も公演後で疲れておりますので、お引き取りいただけませんか?」


 柔らかな態度でニージャッドは注意を続ける。


「……彼らはいいのか?」


 クリストフはジケのことを軽く睨みつけるように見る。

 存在に気づかれていないのかと思ったけど、ちゃんと認識されていた。


「ええ、もちろん。関係者です」


 ジケがフィオス商会の商会長だと聞いていなかったのか。

 フィオス歌劇団と関係があることは名前からも分かるだろうし、VIP席で紹介までされたのだから推測するまでもない。


「君たちは僕の曽祖父のために祖父が呼んだんだ。関係者ではないのか?」


「そうであっても事前にお話ぐらいはいただきませんと困ります」


 クリストフは明らかにムッとした顔をする。

 ヘスイトスのために呼ばれたのだからヘスイトス本人か、今回雇い主となっているメクシトロならともかく、クリストフが二人の権威を振りかざすのは違う。


 色々なところで公演を行ってきた百戦錬磨のニージャッドにそんな安い脅しは通じない。


「ただ少し感動を伝えたかっただけだ。ついでに労うのに食事でも……」


「…………ふぅ」


 クリストフがニージャッドの向こうを見ると、そこにミュコはいなかった。

 ニージャッドが話している間に、ミュコはこっそり移動していた。


 受け取った花束を他の人に渡し、いつの間にかジケの後ろに隠れるようにしていたのである。

 クリストフがミュコを探すと自然とジケが前にいることになる。


 女性ばっかりと言われた時よりもミュコが増えた形で、ジケはクリストフと目が合った。


「食事のお誘いもご遠慮いただきます」


 ニージャッドがキッパリと断りを入れる。

 楽屋の雰囲気はだいぶ悪い。


 イルヒッコクでクリストフはシュトレイブルの威光もあって尊敬される存在かもしれないが、フィオス歌劇団の楽屋の中でその名声は通じない。

 この場においてミュコはみんなのお姫様のような存在で、クリストフは悪い虫に他ならないのである。


「………………失礼した」


 長い沈黙を挟んだものの、特にわがままを言うこともなくクリストフは楽屋を出て行った。

 多少空気を感じる力はあるようだ。


「なーんか、嫌な予感がするな」


 去り際に睨みつけられたような気がするとジケは感じていた。

 このまま終わればいいのだけど、このまま終わらなかったら問題である。


「……ちょっと滞在伸ばすか」


 ミュコが心配になってきた。

 ヘスイトスたちがマトモなので過去のような事件は起きないと思うのだけど、勘違いしたおぼっちゃんが何をするのかジケにも分からない。


「……今日は俺たちと帰ろうか」


「……うん」


「私は劇場の警備について少し話し合いをしておきます」


「お願いします」


 たとえクリストフでも簡単に中に入れるのは良くないことだ。


「せっかく良い気分だったのに!」


 公演で感動した気分がちょっと邪魔された。

 ジケたちは少し機嫌を持ち直そうと屋台で買い食いしながら屋敷に戻ったのだった。


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