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【コミカラ二巻出たよ】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十一章

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理不尽なクレーム3

「これはなんだ?」


 小汚い布をキャッチしてドシボルは怪訝そうな顔をする。


「あんたの馬車から出てきたもんだ」


 馬車に潜り込む前は持っていなかった。

 ということは馬車から出てきたものだということはドシボルにも分かる。


「どっかでうちの馬車をバラして……作りだけ真似たみたいだな。揺れない秘訣を知らないからとりあえず布で代用したんだろう」


「じゃ……じゃあこれは……」


「さっきも言ったが、うちで作ったものじゃない。軽く見ただけだが作りもひどいな。スピード出したらそのままバラバラになるかもしれない」


 ドシボルは青い顔をしている。


「ぐっ……じゃあ、あいつらは……」


 赤い顔をして、また青くなって、布を持つ手がワナワナと震えている。

 念のために、備えてニノサンはジケの前に出て守るようにしてくれていた。


「お前ら! きっとグルなんだ! みんなで俺を騙して……」


「なら商人ギルドに訴えてください。正当な訴えなら受理されるでしょうから」


 どうするのかと思ったら最後にはフィオス商会を詐欺師呼ばわり。

 流石のジケも呆れてしまう。


「くっ……」


 本気でフィオス商会が騙したと思うなら出るところに出てみればいい。

 商人ギルドにも所属して真っ当に商売している。


 こうした紛争があった場合は商人ギルドが間に入ってくれる。

 フィオス商会にやましいことなんて一つもないのだから、訴えたければ訴えればいい。


 ドシボルも分かっているのだろう。

 フィオス商会に一切の非がないことを。


「高かったのに……」


 ニノサンが剣に手をかけているのを見て、ドシボルは怒ることをやめてガックリとうなだれる。

 何台も馬車を買っていくような人がいる一方で、実際買おうと思えば馬車は高い。


 修繕や手入れをしながら長いこと使っているような人も、決して少なくはないのである。


「妻に殺される……」


 怒っていたら怒っていたで困るものだけど、落ち込まれるとそれはそれで困る。


「ノーヴィスさん」


 ジケはノーヴィスを手招きする。


「なんだ?」


「アレ、ありますか?」


「アレ?」


「…………ですよ」


 ノーヴィスに耳打ちしてコソコソと話す。


「あるにはあるぞ」


「どうせならあげちゃうのはどうですか?」


「もう出してもいいクオリティにはなっているからな。会長であるお前がいいのなら」


「じゃあそうしましょうか」


 ジケはニッコリと笑う。

 ノーヴィスは工房の中に向かう。


「ドシボルさん、いいですか?」


「あっ……申し訳ありませんでした。変な言いがかりをつけてしまい」


 すっかり気落ちしたドシボルはもはや別人のよう。


「それはもう大丈夫ですよ。ウチの商会だと騙されたようですね」


「たまたま来ているからと……今考えればやたらと焦らせるようなやり方も怪しかった……」


「会長、持ってきたぞ」


 ノーヴィスが馬車と一緒に戻ってきた。

 馬車は大きなトカゲのような魔物が引っ張っていて、ノーヴィスの後ろには何人か子供たちがいる。


「これは……」


「こうして来てくださったのも何かの縁です。こちらの馬車、差し上げますよ」


「えっ?」


 ドシボルは驚いて大きな声を出してしまう。


「ただし、こちらの馬車、普通の商品とは違うんです」


「と、言いますと?」


 馬車をプレゼントしてあげる。

 フィオス商会は悪くない。


 騙されたドシボルが悪いのだが、流石に少し可哀想。

 けれども商品となる馬車をタダであげるほどジケも甘くはない。


「こちらの馬車を作ったのは彼らなんです」


 ジケはノーヴィスの後ろにいる子供たちを見る。

 彼らはリアーネもいた孤児院の子供たちだ。


 一部の子たちは今ノーヴィスの弟子として日々腕を磨いている。

 孤児院を自分で修理していたり手先も器用、加えて仕事にお金ももらえるのだからやる気も高かった。


「この子たちが……」


「練習で作った馬車です。本来なら商品として出すことはないんですけど、品質はちゃんとしてます」


 ノーヴィスがつきっきりで教えているので、子供たちの腕もメキメキと上がっている。

 そんな中で実際に馬車を作ってみるというのも立派な練習であり、練習として作り上げられた馬車も完成していた。


 ノーヴィスがしっかり見ているので、クオリティは他の職人たちが仕上げるものにさほど劣りはしない。

 ただし、それでも商品として他の人に売ることはできない。


 でもちゃんと使えるものだから、そのまま捨てるには惜しいぐらいだった。


「どうですか? こちらでよければ差し上げますよ」


 もう出来上がっているので、ここから造りを変えろと言われてもできない。

 品質はある程度保証するが、流石に普通の馬車のように全部保証するとは言えない。


 それでもいいならとジケは思っていた。


「本当に……いいのですか?」


 持ってくる時から馬車の音が違う。

 ドシボルの馬車は明らかにガタガタと音がしていたのに対して、ジケの馬車は静かに運ばれてきた。


「いつかお金に余裕ができて……馬車を新しくするとか、二台目を購入する時は面倒でしょうがここまで来てください」


「この度量の大きさが人を惹きつけるコツなんだろうな」


 ノーヴィスは思わず感心してしまう。

 自分なら怒鳴り込んできた相手など一発ぶん殴っていたかもしれない。

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