ようやくご対面
「助かりました、ありがとうございます」
カグノーズたちは大きな怪我もなく無事であった。
肝心のカグノーズは割とクトゥワなんかに近いタイプの見た目をしている。
ジケたちはケントウシソウの群生地からグリーンスネークの人たちを引きずり出すと、ギチギチに縛り上げておいた。
学者たちの誘拐でも重犯罪なのだけど、ケントウシソウの群生地は王国の直轄地で薬草保護のために立ち入り禁止の場所でもある。
ケントウシソウの群生地に入るのもまた犯罪だったりする。
ちなみにジケたちはケントウシソウ採取の許可をもらっているので、入ったところで怒られはしない。
カグノーズたちを助け出すという立派な目的もある。
ケフベラスに騎乗したリアーネにひとっ走りしてもらって、近くの町に駐屯している王国の兵士に通報した。
今頃は連れて行かれていることだろうと思う。
「リンデラン様、それにフィオス商会のジケ商会長が助けてくれた中心だと聞いています」
ジケたちは近くの町まで学者たちを連れて移動している。
王国が派遣した調査隊が誘拐されたのだからきっと騒ぎになっているが、コルモー大森林からは結構離れたところにいる。
連絡するよりもそのまま学者たちを送り届けた方が早いだろう。
「まだよく分かってないって顔してますよ」
「細かくは話を聞いていないので」
カグノーズはヘレンゼールに礼を言ったのだけど、ヘレンゼールはジケとリンデランに礼を言えと言っていた。
最悪リンデランは分かる。
取引の関係があるヘギウス商会の大元であるヘギウス家のご令嬢を知らないはずがない。
対してジケのことはほとんど知らない。
どこかでフィオス商会のことは聞いたことがあったとしても、カグノーズは外出する方ではなくて馬車にも興味なかった。
リンデランよりもジケがどうして自分を探していて、そして助けてくれたのかと謎なのだった。
「話せば長くなるんですけど……ちょっとお仕事の依頼をしようと思ってたんです」
「仕事ですか? それでここまで助けに?」
カグノーズは意外そうな顔をする。
仕事を依頼するためにこんなところまで追いかけてきた、というと奇妙なのはジケも自覚している。
「結果的にはそうなんですけど、なし崩しというか……」
そんなに仕事を依頼したいという強い意思を持って追いかけていたわけではない。
たまたまが重なった。
目の前で事件が起きたから、仕方なくジケたちが事件を追いかけたという形である。
連絡が途絶えたというからカグノーズを探しに行き、コルモー大森林ではほぼ見つけたと思ったら誘拐された。
通報している時間もなかったのでジケたちが追いかけて、最終的にはケントウシソウの群生地までやってきたのだ。
カグノーズのためではあるが、連鎖的に事件が発生してしまったから結果的に追いかけざるを得なかったのである。
「まあ過程はどうあれカグノーズさんを助けに来ました」
ちなみに、バンガルも拘束して兵士に引き渡されている。
脅されて仕方なくカグノーズを身代わりにした、なんて言っていたがそんなことはジケたちに関係ない。
グリーンスネークを引き込んで誘拐を起こした原因になっているのがバンガルなのだから、あとのお裁きはカグノーズたちの証言や国の判断次第となる。
「騙されてしまったのは……お恥ずかしい限りです」
新種の花というのも実は嘘だった。
あるにはあるのだけど、カグノーズの興味を引くような香りのするものではなかったのだ。
「これからの計画としてはひとまずコルモー大森林に戻って、無事を報告しましょう。カグノーズさんはそのまま一緒に帰って、仕事の話でも聞いてください」
カグノーズの精油や香水はヘギウス商会でも扱っている。
きっと商品がなくて困っているはずだから、早めに帰った方がいい。
「命を救ってもらったのです。どのような仕事でもお受けしますよ」
「ありがとうございます」
これで石鹸に香りをつけたいんだ、なんて仕事の依頼はずいぶん気の抜けたものだ。
もうこうなったら絶対に良いもの作ってやる。
ジケはそう思ったのであった。




