コブしに守られる香り1
「あいつら捕まったかな?」
「多分……な」
倒したグリーンスネークの連中は縛り上げて道にそのまま放置してきた。
ただそのままだと死んじゃうので、近くの町で冒険者ギルドに通報した。
多少耐えてもらう必要はあるけれど、何日か耐えれば冒険者ギルドから逮捕に来た人が助けてくれるだろう。
「ケントウシソウか……元気にしてるかな、あいつら」
「きっと元気にコブ振り回してるよ」
ケントウシソウには色々と苦労させられた。
今ではケントウシソウのコブは、かなりありがたく利用させてもらっている。
そのために定期的にケントウシソウを倒してコブを採っている。
地下にいる巨大ケントウシソウのせいなのか、時間を空けるとケントウシソウも割とすぐに増えていたりするのだ。
ジケが直接来ることはあまりないので、生のケントウシソウを見るのもちょっと久しぶりだ。
「もうすぐ着くはずだ」
急いで移動してきて、ケントウシソウの群生地も近づいていた。
「なんだ!?」
突然地面が揺れた。
馬車に乗っていたジケたちが一瞬浮き上がるほどであった。
大きな窪みにでも突っ込んだのかと思ったが、それとはまた少し違った感じがある。
「ねっ……あれなに!?」
窓の外を見ていたウルシュナがあんぐりとしている。
「デカい……コブ?」
ちょうど窓の外にはケントウシソウが生えている群生地が見えている。
そのど真ん中付近に、デカいコブが見えていた。
コブ一つで人よりも大きいぐらい。
高く上げられたコブが振り下ろされ、低い地響きの音と共にまたしても大きな振動に軽く浮かび上がる。
先ほどの衝撃はこれだったのかとジケも驚いてしまう。
「何が起きてるんだ……?」
悲鳴のような叫び声も聞こえる。
ケントウシソウもザワザワとしているような感じだ。
大きなコブの正体はジケにはなんとなく予想がついている。
ただ予想通りだとしても、なんでこんなことになっているのか想像もつかない。
「ユディットは馬車をお願い!」
いつも馬車を止めている場所に、なんて言ってられなくなった。
ジケたちはその場に馬車を止めて、飛び降りる。
「ケントウシソウに気をつけてください! 近づかなきゃ攻撃はしてこないので!」
ジケたちが近づくとケントウシソウはコブを軽く動かして威嚇するような雰囲気を出している。
実際威嚇しているのかは知らないが、どの道近づかなきゃ攻撃もされない。
ケントウシソウに攻撃されないよう、ジグザグに移動しながらデカいコブの方に向かっていく。
「人がいますね」
デカいコブの近くに人相の悪い男たちの姿が見えていた。
「あちらはカグノーズ氏ですね」
少し離れたところ、ケントウシソウに囲まれるようなところに何人か固まっている人がいる。
その中の一人がカグノーズであるとヘレンゼールは言う。
ケントウシソウのかなり近いところにいるのに攻撃されていない。
対して人相の悪い男たちの方はデカいコブやケントウシソウに襲われている。
「あいつらがグリーンスネークだな? ナルジオンさんお願いします!」
「任せておけ!」
ナルジオンは待てをされた犬のようにソワソワしていた。
ジケにお願いされると、目を輝かせたナルジオンは一気に駆け出す。
ケントウシソウを避けずにまっすぐ突き進み、ブンッと振られるコブは回避しながら走っていく。
「なんだこい……ぶへっ!」
ケントウシソウに殴られるの、とナルジオンに殴られるの、どっちが痛いだろうか。
グリーンスネークの男がナルジオンにぶん殴られる。
ぶっ飛んでいった先で、またケントウシソウに殴られるという可哀想なことになっていた。
「あいつは……さっさとあの獣人野郎を殺せ!」
湾曲した刃の大きな剣を持った、いかにも悪人面の男がナルジオンを見て顔をしかめる。
コルモー大森林で馬車に迫ってきた獣人だと気づいたのだ。
「で、ですが……」
他の男たちは困惑している。
ナルジオンが突然現れたことに加えて、戦う環境が良くない。
デカいコブが襲いかかってくるし、下手に逃げるとケントウシソウの攻撃範囲に入ってしまって殴られる。
まともに戦えたものじゃないのだ。
「はははっ! こんなものか!」
一方で、ナルジオンはケントウシソウの範囲内だろうとコブをかわしながら戦っている。
すごい力技としか言いようがない。
「テメェら戦わねえなら周りの変な木を切り倒せ! 俺が戦う!」
悪人面が大きな舌打ちをする。
大きな剣を振り上げてナルジオンに迫る。
「はっ!」
「はっ!? この……!」
ナルジオンは悪人面の剣を両手で挟むようにして受け止める。
「チッ!」
ナルジオンと悪人面に向けてケントウシソウがコブを振るう。
悪人面はナルジオンの手を振り払ってコブを飛び退いて回避する。
「彼らは一体……」
ケントウシソウに囲まれた学者たちも突然現れたジケたちに困惑を隠せない。
子供も大人もいる。
一体どういう集団で、敵か味方なのかも分からない。
「どうも、お久しぶりですね」
「えっ!?」
気づいたら学者たちの近くにヘレンゼールがいた。
学者たちはケントウシソウに囲まれていて、攻撃されずに近づくことは不可能なはずなのに、近づいてくることも気づかなかった。
「ヘ、ヘレンゼールさん。どうしてここに」
痩身、無精髭の男が驚いた顔をする。
この男こそ、ジケが探して追いかけていたカグノーズであった。




