フィオスを追いかけろ!4
お尻の痛みに耐え、途中魔物が襲いかかってくるのも撃退しながら道なき道を突き進んだ。
「どうにか先回り成功したな」
ジケたちは今、切り立った岩山を通る道の途中にいた。
そこはドカナイに向かうのに一番近いルートの、国境付近の場所であった。
国を出る道はいくつもあるが、ドカナイに抜けていくには一つ国を挟んでいく必要がある。
その国に接しているところ山岳地帯となっていて、走行できる道は限られているのだ。
最短ルートでドカナイに行こうと思えば、ここを通るだろうと予想することは難しくない。
「フィオスの気配が近づいている……」
先回りできたのはいいものの、意外とギリギリだった。
半日ほど早く先に到着できたが、アワアワと計画を練ればあっという間に余裕は無くなった。
少し道を逸れれば崖になっている。
すぐに折り返して逃げることも難しい道なので、しっかりと足止めして相手を倒せばカグノーズたちを助けることもできるはずだ。
目を閉じたジケはフィオスが近づいてきているのを感じていた。
少し前からフィオスは飽きたのか、なんとなく無に近い感情だった。
だがジケが近づいてくるに連れて嬉しそうな感情が感じられるようになっていた。
「馬車、見えてきたよ!」
ジケたちは少し先に馬車を隠して、道端で待ち伏せしている。
相手は馬車三台分と多いので、決して戦いも簡単ではないのである。
「……一台しかない?」
緩やかな斜面を登ってくる馬車が見えたのだけど、問題が発生した。
三台あるはずの馬車が一台しか見えないのだ。
ジケが振り返ってみるけれど、ジケの目が悪いのではなくてみんなにも同じように一台しか見えていない。
「…………とりあえず倒して聞いてみるしかないか」
馬車からはフィオスの気配がする。
位置的に馬車の下に隠れているようだ。
フィオスがいる、ということはグリーンスネークの馬車であることは間違いない。
「さてと……ナルジオンさん、お願いしますね」
ジケは少し顔を出して岩山の上の方に手を振る。
「合図があったか。ならば行こうか」
岩山の上の方にナルジオンはいた。
人数差があるならどうしても最初の勢いは大事となる。
だから奇襲しようと考えた。
ナルジオンはゴツゴツとした岩壁を器用に登っていき、上で待機していた。
ジケの合図と馬車の位置を確認して、軽く飛び上がる。
「はははっ! こんなこともうさせてもらえないかもしれないからな!」
ナルジオンは笑いながら落ちていく。
「ん? な…………」
「運がなかったと思え!」
勢いを活かし、馬車の御者台に座っていた男の頭に拳を落とす。
少し離れていたジケたちにも聞こえるほどの鈍くて大きな音が響き渡った。
「お前に罪はない! 少し寝ていろ!」
ナルジオンは血に濡れた拳で馬車を引いていた馬を殴り飛ばす。
暴れられて崖から落ちでもしたら困るからしょうがない。
御者台にいた男と違って、馬の方は手加減してちゃんと殺さない程度で気絶させている。
「チッ! なんだこいつは!」
「汚らわしい獣人が!」
馬車の中から男たちがゾロゾロと降りてくる。
結構ギュウギュウに乗っていたのか、馬車の見た目よりも多くの人が出てきた。
「……あの人に任せても大丈夫なのではないですかね?」
ジケたちも馬車に向かう。
ナルジオンはすでに戦い始めていて、男たちがボコボコにやられていく。
ヘレンゼールは自分が戦うまでもないなと思っていた。
「うわっ!?」
「フィオス! 久しぶりだな!」
剣を抜いて近づいてきたジケに斬りかかろうとした男が盛大に転ぶ。
その足元にはフィオスがいる。
フィオスを踏んで、ニュルンと滑って転んだのだ。
「ごめんな!」
ジケは起きあがろうとする男の頭を、剣の柄で殴り飛ばす。
痛いだろうなとは思うが、死ぬよりはマシだろうから許してほしい。
「あのガキども……!」
「子供でもやるんですよ!」
「ほっ、どりゃ!」
「くそっ……ぐっ!」
リンデランとウルシュナは上手く連携をとって戦っている。
ウルシュナが相手の気を引き、リンデランが魔法で攻撃する。
「ピコちゃん式全体俯瞰術!」
「私のお尻に隠れているだけではありませんか?」
「立派な戦術だよ!」
戦えないピコはちゃんと離れている。
いつでも戦うに向かう準備はしながらも様子を見守るヘレンゼールの後ろで、ひっそりと気配を消していた。
「みんな頑張れ! ピコちゃんが応援しとるよ!」
あくまで応援。
邪魔にならないのが大事だとピコは分かっている。
「チッ……逃げろ!」
ジケのみならず、明らかにお嬢様なリンデランやウルシュナにすら勝てない。
ナルジオンは笑いながら暴れているし、リアーネやユディットもいる。
さらにはヘレンゼールまで戦わずに控えている。
意気揚々と馬車を降りてきたものの、もはや勝ち目はなかった。
状況を悟った二人ほどが元来た道を走って逃げ出す。
「逃しませんよ! ジョーリオ!」
「うわっ!? なんだ!?」
こうなると逃げ道は引き返す方向しかない。
だからちゃんと逃走対策もしてある。
崖からヌッと現れたのはユディットの魔獣であるジョーリオ。
お尻から糸を飛ばして逃げた男たちのことを捕まえる。
糸に絡み取られて、男たちは地面に張り付けられてしまった。




