この遺跡は!2
「何があったんですか?」
こういう時に冒険者は冷徹というのか、現実的というべきか、そんな一面がある。
遺跡の中で何が起ころうと自己責任。
助けてくれということは何かの事故や危険があるということになる。
変に声をかけて、巻き込まれても困る。
そんなことからサンモーウの嫁さんにすぐに駆け寄る人はいなかった。
夫婦で活動していて、周りと交流が少ないのもちょっと悪かったのかもしれない。
だがジケはサンモーウのことが気になったので声をかけた。
「あの人が……罠にかかって……」
サンモーウの嫁さんはかなり気が動転しているようで、ジケの腕を強く掴む。
「落ち着いてください。何があったのか、順を追って教えてください」
指が食い込んで痛いほどだけど、ジケはサンモーウの嫁さんを落ち着かせようと冷静に対応する。
「遺跡に入って探索していたら……近くの冒険者が罠を発動させてしまって……ゴーレムのようなものが追いかけてきたんです。逃げていると別の罠が……彼は私を庇って……落とし穴に……」
落とし穴がどんな罠かまだ分からない。
下が凶悪になっていて即死する罠かもしれないし、ただちょっと落ちただけなら生きているかもしれない。
罠にかかったなら生きている可能性は低い。
ただサンモーウの嫁さんはほんの少しの可能性にかけて、誰か助けてくれる人はいないかと遺跡を飛び出してきたのだ。
「サンモーウさん助けに俺たちが入ってもいいですか?」
かなり状況的には良くない。
だけど死んでいるとは、まだ確定ではない。
ジケは遺跡前で待機している冒険者たちを見る。
要するに割り込みたいということを言っているのだ。
「……俺は酒飲んじまったからな。抜けるまで時間がかかりそうだ」
「あー、俺もそうだ」
サンモーウの嫁さんの様子をうかがうと、すぐには行動しなかった。
だが冒険者は同業者同士助け合う精神も持っている。
これが森の中でサンモーウが魔物に襲われたなんて話なら動く人もいただろう。
遺跡の中で罠にかかったというのは、冒険者にとってもリスクが高い。
誰か行ってくれるなら。
そんな思いがどこかにある。
順番を譲ることで完全に見捨てたわけじゃないと言い訳も立つ。
微妙な責任逃れと冒険者の矜持のようなもので、みんなゴニョゴニョとジケに順番を譲る。
「まあ、酒も持ってきてくれたしな」
大人ってのはめんどくさいなとジケは思った。
行ってこいと一言送り出してくれればカッコいいものなのに、遠回しに言い訳するように入ってもいいかもしれないというのだから。
「もちろん私も行きますよ!」
リンデランはどうしようと思ったのだけど、ジケの視線にやる気満々でリンデランは答える。
「案内してください。サンモーウさんのこと助けに行きますよ」
少しでも可能性があるなら動いてみる。
ジケはサンモーウを助けに遺跡に飛び込むことにしたのだった。
ーーーーー
「そういえば、お名前聞いてませんでしたね」
「あ、ああ……私はオルナ。サンモーウとは……知り合い、なのか?」
サンモーウの嫁さんであるオルナと一緒に遺跡に入って行ったジケたち。
オルナは改めてジケたちを見て、不思議なメンバーだと思った。
助けを求めた時は焦っていてよく確認しなかった。
ちゃんと見てみるとメンバー全体の年齢は若く、明らかに年齢が下であるジケが全体を率いている。
冒険者っぽくないリンデランもいるし、普通なら助けを求めないような奇妙な相手だと今更気づいた。
「サンモーウさんのことは、ちょっと探していたんです。会いたくて待ってたんですけど……トラブルなら助けに行こうと」
「サンモーウを探して……?」
オルナは少し眉をひそめた。
サンモーウは人と交流しないわけではないが、顔の広い人ではない。
サンモーウを探すような理由がオルナにも見つからない。
まして冒険者でもなさそうなジケたちが何の用があるのか想像もつかない。
「まあ、無事お会いすることができたらオルナさん含めてお話ししますよ」
生きてるかも分からないのにスカウトしたいとも言えない。
何にしても無事に助け出すことができてからの話である。
「それにしても……ゴーレムなんてものがいるんですか?」
周りを警戒しながら遺跡の中を進む。
遺跡の入り口は遺跡そのものの正当な入り口ではない。
遺跡の一部が崩れて露出し、崩れた岩を慎重に降りて中に入ったのである。
どちらが奥に進む道なのかも分からないが、今は探索ではなくサンモーウ探しが目的だ。
必死に走って遺跡から脱出したオルナは、道も少しうろ覚えなところがある。
しかしなんとか記憶を辿ってサンモーウのところに向かっていた。
「罠の発動でてんやわんやとしていたので、戦いませんでしたがおそらく……」
遺跡は魔物の巣窟になっているという危険がすでに確認されている。
罠があるかもしれないということは考えていたが、ゴーレムという特殊な魔物もいるとは驚きだ。
ゴーレムが特殊な点は人が作り出すことができる魔物だということである。
量産できる代物ではないし、ジケには作り方も分からないが、特殊な素材やかなりの魔力があると人工ゴーレムを作ることもできるとジケは聞いたことがある。
ゴーレムがいても魔物の巣窟になっているという表現はあまりしないので、話に聞こえていた魔物とゴーレムはまた別の存在だろうと思う。




