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【日常】詭弁論者の感傷
【お題:宇宙、タライ テーマ:平常運転 文字数:500字】
「――この世界に人の意思は存在するのだろうか」
そんな呟きが聞こえ、私は寝室へと向かう足を止めた。
居間を覗くと、普段はバカな屁理屈ばかりで騒ぐ姉が、窓からぼんやりと夜空を眺めていた。
「珍しいね、お姉ちゃんが感傷に浸るなんて」
「そうかな? ……そうかもね。今日犯したミスを悔やんでたら、ついね」
彼女は星よりも遠くを見つめながら、呟いた。
「……ねえ美優、貴方は運命論って信じる? 宇宙がビッグバンから始まって以来、世界は物理法則に従って動いてきた。それってつまり、物事の因果や未来は始めから確定しているってことだよね。……人間の意思すらも」
「……どうだかね」
姉が何を思っているのか、私には分からなかった。
ただ何となく、ぼんやりと応える。
「だから私の行動も、意思も、全部覆しようがなかったんだ。……どんなに私が頑張っても、今日の行動を変えることは……出来なかった」
後悔しているのだろうか。それとも……自分の無力さを嘆いているのだろうか。
静寂ののち、私は言葉を慎重に探し――
「てな感じで、明日課題を忘れた言い訳をしようと思うんだけど、どう思う?」
「……真面目に聞いて損した」
コイツの頭、タライでぶっ叩いてやりたい。
美優と姉 その4




