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【ファンタジー】散り逝くその瞬間まで
【お題:炎、鷹、城 テーマ:特攻 文字数:500字】
滅びゆく領国を城の窓から眺める。
城壁も庭園も、不気味なほどに紅く明るい。この部屋に炎が回るのも時間の問題だ。
街の民や従者達も、一体何千人が犠牲となっただろう。
家族も全員死んで……残るは私だけ。
「姫! 魔物の群れがもう、すぐそこまで!」
喧騒の中、廊下から手負いの近衛兵が駆け込んできた。
その顔は絶望一色だった。
「そうか……。伝令ご苦労」
私は静かに頷いた。
そして一度目を閉じてから、開き、一本の細剣を手にして立ち上がる。
「姫……なにを……」
「決まっている。私も戦うのだ」
「そんな無茶な! 姫は早くお逃げくだ――」
「では、どこへ?」
私の問いに兵士は目を伏せ、言いよどむ。
どうせもう逃げ場も勝ち目もない。なら……。
私は壁に掛けられた家紋――鷹のエンブレムを見上げた。
「鷹のように勇ましくあれと、私は父上に教えられ育った。……これは私のわがままだ。許せ」
「しかし!」
「見くびるな。騎士のような活躍はできぬが……無様な死を迎えるつもりもない!」
「姫、お待ちください! 姫っ!」
騎士の叫びを置き去りに、私は廊下を駆け抜けた。
そして形見の細剣をぎゅっと握る。
――父上よ、見ていますか。
私の最期の雄姿、今ここにお示しします。




