【文学もどき】不可思議な力は希望を叶えるか
【お題:過去、砂時計、冷酷な記憶 テーマ:時の中で眠る少年 文字数:500字】
時が止まればいいのに、と少年は思った。
冷酷な過去の記憶から目を背きたくて。自分の犯した過ちを認めたくなくて。
そして願いは叶い、魔法の砂時計を手にした少年は……ふと考える。
自分の願望は本当に正しかったのだろうか、と。
「………………」
公園のベンチに寝そべって、空虚な心で空を見上げる。
太陽も雲も動かない退屈な空。
噴水も子供達も止まったままで、まるで作り物の世界に一人取り残されたような感覚に、気が滅入る。
時が止まれば、確約された絶望的な未来も、自分の過去を罵倒する者も消える。
そこはまさに自らが望んだ環境だった。
――なのに、
「……何してんだ、俺」
少年は気がついた。
“今”だけでは世界は成り立たないのだと。
過去のない世界なんて偽物で、未来のない世界なんて退屈だ。
たとえ残酷でも、時は流れるからこそ意味を持つのだ、と。
「……そうだよな」
少年は起き上がり、砂時計をぴんっと弾く。
と、滞っていた砂がさらさらと下へ落ち始める。
――時間が、再び動き出した。
「……そろそろ行かなきゃな」
過去はなかったことにできない。時間は前にしか進まない。
少年はグッと伸びをすると、ベンチから立ち上がった。
その顔に、迷いは消えていた。




