【ファンタジー】《怱々たる紅の聖爺》
【お題:島、クリスマス、世界 テーマ:中二病っぽい文章? 文字数:499字】
――誰かが言った。この世界は不幸に満ちている、と。
それはあまりに夢のない、だが紛れもない事実だ。
故に彼は生涯を賭し、その理不尽な真実に抗うと誓った。
「進捗、60%。今月中のノルマ達成は絶望的、か……。ま、いつも通りじゃな」
世界中の、約10億もの少年少女の名を綴った分厚いリストを開き、髭面の男は苦笑した。
この極東の島国でさえおよそ1千万人の子供が暮らしている。
その全員の素行調査を、今月中に。魔術を使っても無謀と言わざるを得ない。
「……年老いたもんだな。本番は半年も先というのに、もうガタが来とるとは」
――だがやるしかない。己がやらねば誰がやるというのか。
来たる聖夜、すべての“良い子”に幸せを届けるために。
自分の身体など知ったことかと。
鈍った足腰に鞭を入れるように、ニヤリと笑い、叫ぶ。
「往くぞルドルフ! おまえの赤鼻、飾りではないのだろう?」
グォォォ、と、草食動物とは思えぬ咆哮を上げ、老夫の相棒がソリを引く。
せめて子供達だけでも、この世界に幸せが満ちることを夢見て。
赤き衣を纏いし老夫が、今宵も宙を駆け抜ける。
6月の真夜中。
人々は季節外れの彼を指さし、こう呼んだ。
――《怱々たる紅の聖爺》、と。




