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【シリアス】深淵をのぞき見てはいけない
【お題:森、裏取引、暗黒のメガネ テーマ:人間の暗部 文字数:500字】
暗黒の眼鏡。
それは人間の内側――心の暗黒面を見通す力を持っていた。
そんな魔道具欲しさに、俺は人里離れた森の奥地へとやってきたわけだが。
「ふーん、こんなサングラスみたいなのが、ねぇ」
「取引は成立した。他に用がなければ、さっさと帰るんだな」
男は濁った目を俺に向けて、吐き捨てた。
無論そのつもりだ。だがその前に。
確認の意味で、俺は男に問う。
「これがあれば、どんな奴の弱みでも握れるんだよな?」
「……ああ」
「つまりその弱みで脅せば、俺はどんな人間だって支配できる、と」
ニヤリ、と思わずほくそ笑む。
だが男は、俺の目をじっと見つめて、
「……『深淵を覗くとき、深淵もまたおまえを覗いている』」
「は?」
「単なる忠告だ。……あとは好きにしろ」
「あっそ」
哀れみのこもった声音だった。俺はそれを鼻で笑い飛ばす。
このとき、俺は深く考えなかったんだ。
暗黒の眼鏡の持ち主が、どうして人の訪れない森の奥地に住んでいたのかを。
「んじゃどうも、ごちそうさん」
俺は奴の言葉を聞き流し、さっさと森を抜けることにした。
そう、これがすべての始まりだった。
人間不信、絶望、誹謗中傷の嵐。
この日から、俺の見る世界はどす黒く染まり、
崩壊が始まった。




