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【文学もどき】カブトムシとカナブン
【お題:カブトムシ、子供 テーマ:称賛の代償 文字数:495字】
子供の頃、僕が好きな昆虫はカブトムシだった。
そのくらい、僕は平凡な子だったんだ。
自分の弱さを直視しないで、強い虫とか、強いゲームキャラばかり好きになる小学生。
だから、カブトムシとカナブンが同じ甲虫の仲間だって知ったとき。
僕は無性に悲しくなった。
「カナブンってかわいそうだよね。カブトムシと比べられてさ」
そう友達に言ったら、「カナブンの気持ちなんかどうでもいい」ってみんなに笑われた。
弱いカナブンは気持ち悪くて、強いカブトムシは憧れの的。
それが常識的な意見らしい。
だけど、ハルキ君は違った。
やさしくて、クラスで人気者な彼は、僕の意見に対して、
「……なぁ、カブトムシってそんなに羨ましいか?」
いつもの笑顔じゃない、真剣な目をして、言ったんだ。
「別にツノを見せびらかすために生まれたんじゃない。なのに虫かごで飼われて、無理やり戦わされて、見世物にされて。キミはそんな生き方が羨ましいのか?」
「…………」
「俺だったら、自由に飛びまわれるカナブンの方が羨ましい」
ハルキ君は僕の目をジッと見て、つぶやくと、
またいつもの笑顔に戻って、クラスの輪に溶けこんだ。
そのときの彼の表情を、僕はいまでも覚えている。




