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【グルメ】空腹に勝るもの
【お題:屋敷、スイーツ テーマ:無関係な身分差 文字数:499字】
屋敷の掃除が終わって、僕は固いベッドに倒れこんだ。
体が動かない。
パンと豆だけの食事ではとっくに限界だった。
「もう、イヤだ……」
家柄の力はかくも残酷なのかと、召使いの家系の生まれを何度恨んだことだろう。
いっそ全部を捨てて逃げてやろうか、なんて、静かに目を閉じようとして。
そのとき部屋の扉が開き、僕と同い年くらいの少女が顔を出した。
「大丈夫ルカ? だいぶお疲れだけど」
「お、お嬢様……どうして?」
「一緒に休憩しようと思って。コレ、食堂からくすねてきたの」
主の娘様は舌をちろっと出しておどけると、
黄色い料理の乗った小皿を差し出してきた。
「……どうして、僕なんかに?」
「いいからほら。食べてみて」
彼女は僕の隣にちょこんと座ると、幸せそうに料理を口に運んだ。
僕もスプーンを手にとり、恐縮しつつ一口食べる。
とろける甘さだった。
ミルクと卵の香りが鼻を抜ける。なめらかな甘みが黒くてほろ苦い蜜と調和して、口いっぱいに広がった。僕にはあまりに過ぎたごちそうだ。
でも何より、
「ん~、やっぱり友達と食べるプリンは格別ね♪」
「……そうですね」
「? どうして泣いてるの、ルカ?」
何も知らない彼女の笑顔が、僕には一番心地よかった。




