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【ファンタジー】邪竜が望んだものは

【お題:島、竜、恩返し テーマ:一番の恩返しとは 文字数:457字】

 この島には邪竜が住むといわれ、未だかつて近づいた者はいない。

 それでも、私は無理を覚悟でこの地へ降り立った。


「邪竜さん……いませんか……?」


 ボートを陸にあげ、恐る恐る島を歩く。

 無人島には草木が生い茂り、私の行く手を阻んだ。

 そして中央にそびえる真っ黒な岩山にたどり着いた。そのとき、


「きゃ!?」


 突如岩山が揺れ、鎌首をもたげた。

 邪竜だった。咄嗟に私は上ずった声で話しかける。


「あ、あああの! 以前命を救っていただき、ありがとうございました! お、覚えていますか? それで、お礼をしたくて、その……」


 噂では邪竜の好物は人肉らしい。

 下手をすれば、私は『お礼の品』代わりに食べられる危険さえある。

 でも、構わなかった。

 もとよりこの竜がいなければ失っていた命。

 それで恩返しになるなら……と、私はお辞儀をしたまま、邪竜の動きを震えて待った。

 

「……え?」


 しかし、私が襲われることはなかった。

 それどころか、竜は私を見据えて、静かに身をかがめ、


「乗せてくださるの……?」


 戸惑う私に、竜は翼を広げて応じる。


 竜の瞳が、嬉しそうに笑っていた気がした。

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