罵倒
その声は突然聞こえた。なんの前触れもなくほんとに突然で、女の子のようなかわいい声が出てしまった。
「おやおや、かわいい声ですねぇ」
小悪魔的笑顔で俺を見下すのは星宮の妹の茜ちゃんだ。まさか、日葵と友達だったとは思わなかった。
「お兄ちゃん知り合いなの?」
「そうだぞ。クラスの友達の妹なんだ」
俺は胸を張りながら咳払いをして兄としての威厳を保たせようとした。
「ちがうよひまちゃん。この人私をナンパしてきたんだから! ついには体に触れようとして……」
「うわ、キモ。なにしてんの」
日葵は目を細めて俺を軽蔑しているような視線を送ってきた。俺はそれと同時に茜ちゃんの方を睨んだ。
「あはは、お兄さんそんな怖い顔しないでくださいよ。冗談じゃないですか」
「え、冗談なの?」
「半分ほんとで半分嘘」
「ふーん」
嘘と本当に半分なんてものが存在するのか。この場合全てが嘘なのは猿でもわかるぞ。
「そんなことより、どうして俺の部屋に入ってきたんだ?」
「いや~、お兄さん今学校行ってないみたいじゃないですか」
「だ、だからなんだ。だいたい誰から聞いたんだよ」
「お姉ちゃんとひまちゃんに聞きました」
俺が陽葵を見るとすぐに目を反らして、なにかをごまかしている。そのなにかというのは、言うまでもなく茜ちゃんに俺のことを言ったことだ。
「だからって急に来られると困るんだよね」
「そんなんじゃダメですよ。まあ、ダメ人間なんで仕方ないかもしれないですけど」
彼女は小悪魔的笑顔からついに笑顔を消した。
俺への圧力をさらに強めていっそう緊迫とした空間になった。
「ダメ人間ってなんだよ。俺だって努力して――」
「努力してるのは誰だって同じだと思いますよ。でもお兄さんは逃げてるじゃないですか」
「逃げてなんかない」
「逃げてますよ。この間何があったのか聞きましたけど、お姉ちゃんの友達……いや、その他のものからも逃げた見たいじゃないですか」
茜ちゃんは次第に俺へと近づいてきて、とうとう顔と顔が触れるくらいの距離まで接近してきた。
「な、なんだよ」
「いえ? やっぱりお兄さんは自己中なんだな~と思って」
「さっきいってた"その他"ってなんだよ」
「それは自分で考えてくださいよ。お兄さんの知識のない頭でも頑張ればわかりますよ」
「知識のないは余計だよ」
「そうですか? 悔しかったら学校くらい行ってくださいよ。ただでさえ友達が少ないダメ男なのに、ヒキニート何ていう称号が加わったらもうかわいそすぎて見てられないですよ」
「言いたい放題いいやがって!」
俺は少し手をあげたが、それだけに終わった。茜ちゃんに触れることもなければ、殴ることもない。
彼女と話すのはやけに心地がよくて裕信と話すのと変わらないくらい楽しい。
「ごめんなさい。お兄さんいじめるの楽しくって」
「まあ、許すけどさ」
「嘘でーす。あなたみたいなくそ人間になんか謝りませんよーだ」
茜ちゃんは片目を閉じて舌をだし、俺をバカにしてから日葵の手を引いて部屋を出ていった。
さっきまで騒がしかった部屋が今は静まりかえり、寂しさを覚える。
俺は茜ちゃんに言われたことを頭のなかでリピートさせながら、学校に行く支度をした。
読んでいただきありがとうごさいます。
書いてて罵倒なのかどうかわからなくなってしまいましたw




