逃避
今日は珍しく朝早く学校にきた。いつもは朝のホームルームが始まる直前に来るが、今日は早くきた。
それは俺だけじゃなく、星宮も同じで、二人で作業を進めるために早くきた。
「どうしよう、全然進まないな」
「そうだね。十宮くんは何かいいアイデアないの? ……ってないよね……………」
「ああ、全然出てこないぞ」
朝早くきたのはいいが、頭を抱えていた。
「こうしてる間にもホームルームの時間が迫ってるから急がないとな」
「急ぐっていってもしょうがないじゃない。浮かんでこないんだから」
考えても考えてもアイデアがでない。そんなことも関係なく、とうとうホームルームが始まってしまった。
「どうしたんだよお前」
「あ? ああ、アイデアが全然浮かんでこないんだよ」
「それは大変だな。そういえば、お前祭りのステージで映像流すんだって?」
「さては、裕奈先輩に聞いたな? あの人すぐなんでもいうんだから」
「おれも手伝うから何か困ったことあれば言えよな」
珍しく裕信が頼れる人間に見える。いつもは不良になりきれてない、俗にいうなりきりヤンキーみたいな印象だったから今日の台詞は予想外だ。
「おお、それは助かる」
「それにしてもどうしたものかねぇ、映画のことは」
「お前今日積極的だな」
「なんだよ、べ、別いいじゃねぇか」
「ま、いいけどさ、なんかいいアイデアない?」
「んー、実際に演技してみればなぁ……」
そうだねぇ、実際にアドリブで演技できれば簡単なんだけどね……………ん?
「それだ!!」
「どれだよ、俺大したこといってないし案も出してないんだけど」
「いや、演技してもらえばいいんだよ」
「してもらう?誰に」
「演劇部だよ」
俺たちが通うこの丹凛高校には演劇部がある。演劇部は、上手じゃないと言えば失礼だけど、県大会には毎回出場している。
「演劇部にお題を出してアドリブで演技して、それを映像にとって後でみんなで研究すれば、少しは参考にできるんじゃないか?」
「たしかにそれができたらいいけど、演劇部に知り合いなんているのか?」
「いないよ……」
そうだった。俺にはこいつ以外に中のいい人は、星宮と裕奈先輩だけだ。演劇部の知り合いなんているはずがない。
「まあ、この件はお預けだな」
裕信のこの人で、この会話は終わった。そのままなにもなくホームルームも終わった。
「なあ、星宮。演劇部の知り合いっている?」
「い、いることにはいるよ」
「紹介してくれないか?」
「いいけど、と、隣の席の前田さんなんだけど……」
「そうだったのか。同じクラスのやつでよかったな~少しだけ気がらくになったよ」
星宮は席を離れて、俺から話があることを伝えに前田に近づいた。
「前田さん。十宮くんがちょっと話あるみたいなんだけど」
前田か、おとなしそうだしいい人そうだけど、了承してくれるかな。少し心配だな。
「え、十宮くんが?」
星宮が話しかけると前田さんはこっちを向いたが、しばらく口を開かなかった。
(十宮くんかぁ……この間まで引きこもってたんでしょ?なにされるかわからないし急になに?気持ち悪いんですけど)
「十宮くんおは――」
前田は僕に話しかけたが、耳に聞こえる声より心に語りかけてくる声が先に聞こえた俺は、その場にいるのが辛くなり走り去った。
走り去ったのはいいが特に行く場所はないから、とりあえずトイレに逃げた。
「なに逃げてんだ俺……もう逃げないって決めたのに」
僕は、演劇部のことを話せなかったことよりも、決めた決意をすぐに投げ出した自分に絶望したのだ。
「くそ……………くそ!」
俺はトイレで一人頭を抱えた。
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