恐怖
「ただいま」
あのあと俺は、先輩と別れて家に直帰した。
別になにかやることがあるとか、行きたいところがなかったとかではなく、ホントに何となくだ。
「お兄ちゃん、今日のデートは楽しかった?」
「あのー日葵さん?目が死んでますけど」
「どうだったの?」
日葵さんは俺が帰って数秒で、威圧的な笑顔(仮)で、出迎えてくれた。
「う、うん楽しかったよ。そ、そうだ! 祭りの発表会に出演することになったんだ!」
「そんなことは聞いてないよ? どんなことしたの?」
「どんなことってそりゃ、コーヒー飲んで、一緒に水着を買って……」
「買って?」
「買いました」
「ふ~ん。本当は今日私とお出かけして、映画見たり食事したり、水着を選びあったりするはずだったのにね?」
「そ、それはホントにごめん!」
俺は全力で謝った。今までしたことないくらいに。
「それが、少し話があるからって出ていって帰ってきたと思ったら、水着を一緒に買ったって?」
「すいません。もう許してください」
とうとう俺は土下座までしていた。買っているときから俺は陽葵に申し訳ない気持ちしかなかった。
「じゃあ、私がいうこと復唱してね。そうしたら許してあげる」
「わかりました」
「わたくし、十宮宗一郎は、妹との約束を破り、年上美人の巨乳と一緒にラブラブで水着を選びました」
「わ、わたしく、十宮宗一郎は、妹との約束を破り、と、年上、び、びび美人と一緒に、ラブラブ? で水着を選びました」
俺は疑問に思いつつもとりあえず必死に復唱した。
「ですが、今度、最愛の女性である妹に最高のご奉仕をさせていただきます。ご奉仕というのは、妹のいうことをひとつなんでも聞くことです」
「ですが、今度、最愛? の女性である妹に最高のご、ご奉仕をさせていただきます。ご奉仕というのは、妹のいうことをひとつなんでも聞くことです……ってなに言わすんだ!」
「誓ったね? 必ずしてもらうからね」
その瞬間、日葵の目は生き返り、普通の笑顔に戻った。この時間はなんだったんだ?というか帰ってから15分くらい経ってるぞ。
「もういいか?部屋にいっても」
「いいよ~」
おお、ここはすんなりいかしてくれるんだな。
まあ、ここで絡まれるのは腹立つからいいけど
部屋に戻ると、パソコンを開き、チャットを開いた。
「ヒロ、いるか?」
「いるよ。十宮くん」
そうだった。このヒロは、裕奈先輩だった、なんか変な感じするな。
「おう。もう、めんどくさいからいつも通りの感じでいいですかね?先輩」
「私はかまわないけど」
「ならいいですね。それはそうと、申し込みは先輩してくれますよね?」
「ああ、それなら任せておけ。最高に仕込んでおくから。君は動画のことだけを考えてくれ」
「わかりました。聞きたかったことはそれだけですけど、先輩は何かありますか?」
「うーん、いや、特に急ぎの用事はないかな」
「じゃあ、これで」
「ああ」
チャットを閉じて、何をしようか考えてるときちょうど食事の準備ができたみたいで、呼ばれたから食卓に向かった
「「いただきます」」
「今日のデートはどうだったの? 裕奈ちゃんとだったんでしょ?」
母さん。その話題はやめてくれ。頼むから
「あ、あれはデートとかじゃなくてこれからの予定とかを合わせてただけ――」
「お兄ちゃん?」
また、あの笑顔(仮)だ。
「と、とても楽しかったよ!」
「あら、そう。それはよかったじゃない」
今日を生き抜くこと、妹を怒らせないこと。これがいかに重要かということを学んだ一日だった。
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