決意
「シナリオはまあ、だいぶすすんだけど準備がねぇ……」
深いため息を吐きながらコーヒーをすする俺、とても美味しい。でも、ひとつ気に食わない。
「なんですか……裕奈先輩」
ニコニコしながらこちらをずっと見ている。嬉しそうに、楽しそうに、幸せそうだなぁ。昨日あんなことがあったというのに
「何か用事があるから呼んだんじゃないんですか?うれしそうにしてますけど」
そう、今日は休日。もともと日葵と出掛ける約束、映画を見たり二人で夜景見たりと、まるで恋人のような貴重なひとときを過ごせる大事な休日のはずだった。だがしかし、そんなことはなく今日の朝起きたら裕奈先輩が俺の上に乗っていた。
「あ、ああ今日は君に話があって呼んだんだ。この前の作品をコンクールに出してみないか?」
「え、ええ!?コンクールですか!?いやいや、無茶ですって」
「無茶なんてそんなことないと思うよ、この私を負かしたんだから。それと自信もつくと思うし」
自信か、たしかに自信をつければ声を克服できるかもしれない。でもリスクがありすぎるぞ、批判されたことでまた声が聞こえるかもしれない。
「でも、リスクがありますよ。失敗したときとかどうするんですか? 俺はあの時先輩だから強気で行きましたけど」
俺はひきつった笑顔で聞き返したが、先輩は変わらずニコニコした笑顔を崩さなかった。
「君はこうして逃げ続けるのか?」
逃げる。そうだよ、俺は今までずっと逃げてきた。いじめられたときにクラスの奴等や色々なものから。でも、ここ最近頑張ってきたんだ。友達もできたし、映画を作り始めた、人との繋がりを持つことができた。もう逃げることなんてない。
俺は真っ直ぐ先輩の目を見た。見たというよりは睨んだ感じに近い。
「もう逃げません、もう後には引けないんです」
「そうか、そうだよな。さすが私が見込んだ十宮くんだな。そして君はSなんだな。かっこいいなぁ……」
Sなのがかっこいいのかはわからないけど、めんどくさくなりそうだから触れないようにしよう。とりあえず元気に返事をしておけば平気だろう。
「はい!で、その発表会というのは」
「それは、この町の祭りで開催される物なのだが、知ってるだろ?」
「丹凛祭りですよね?でも祭りでそんなものありましたっけ?」
「ああ、祭りときにメインステージでバンドとかダンスとか色々な発表やってるんだよ。そこで発表したらいいんじゃないかと思ってね。」
「はい!やりましょう!って言いたいところですけど空気感違いませんかね?」
「まあ確かに比較的映像作品の発表は少ないと思うけど、斬新でいいじゃないか。この作品が受ければ、学校の認知度も上がるし映画部債券につながると思うのだが?でも結構人多いから覚悟したほうがいいぞ」
確かに映画部の債券につながるのは一理ある。でも怖い、今からでも人の多さは想像できる。先輩はこういう時無駄なプレッシャーをかけてくるなぁ………でも決めたことだ、もう後には引かない、逃げない。過去の自分とはもうおさらばだ。そう俺は固く決意した。
これから準備とか忙しくなるかもしれないけど、今はそんなこと考えたくない。そんなことを思いながら俺は先輩とお互い見つめ合い、コーヒーを全て飲み干した。
先日は申し訳ありませんでした。そして、読んでいただきありがとうございます。
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