4話 イケメンじゃないと許されない
少しだけBL要素が強めです
「だっ……だめです!そんな......会って間もないのに」
「何言ってる、さっさと脱げ。脱いで俺のところに来い」
マジでおわった......こんなに話が通じない人なんて初めてや......
でも、究極のポジティブシンキングをしたら、喜ぶべきはズボンを脱げとしか言われてないってことや。ズボンだけでええねん。
「......脱げば良いんですよね」
「ああ、早く」
ったく......この性欲魔神が......。
ベルトを取るのに手こずって、金属のカチャカチャという音が無駄に響き渡る。男は不快そうな顔をして眉間にシワを寄せている。本当に自分勝手な変態や。
やっとベルトが外れて、チャックに手をかけると、途端に羞恥心が体中を駆け巡る。
「あの......本当に脱がなきゃだめ......?」
「当たり前だろう。そんな臭いやつを近くには寄せられん」
別に俺は近づきたくないからこれでええねんけど......。
でも、宝石のような目がどうにも気になって、少しだけ近くで見たいって気持ちがあるのも事実だ。
意を決してチャックを開ける......それができたら良いのに、全然できない。
だって......絶対それで終わらんもん。
ズボン脱げだけで終わる変態なんかおらんやん......。なんで俺こんな魅力的な男に生まれてもうたんやろ......。
若干涙目になって嗚咽し始めたからか、初めて男は心配そうな声で話しかけてきた。
「どうした?どこか痛むのか?」
……確かに痛むで。心がすーっごく痛んでんねん。
「......俺......っヒグ、彼女できたことないし......グズっ...初めてだって、何もできてないんです」
「ほう......」
「だから......ここでは......嫌なんです......グズん」
俺の思いが伝わったのか、男はしばらく黙り込む。どうやら人の心は少しだけ持ち合わせてたみたいやな。
胸をなでおろしたのも束の間、妙に色気のある声で男は言う。
「いいから脱げ」
うーん......この外道っぷり、イケメンじゃなかったら許されないし、イケメンでも俺は許せないね。
「何をモタモタしてるんだ?」
「だって!男に......しかもイケメンにパンツ見られるのなんか嫌やん!」
そっかそうやったんや。
多分、コイツが大した顔じゃなかったら、なんだかんだ今くらいはもたもたしなかったはずや。ただ、コイツがなまじ推定高身長のイケメンやから、なんか屈辱的で嫌やったんや。
男もやっと合点がいったかのように深く頷くと、真面目な顔で言う。
「大丈夫だ。見てない」
「いや、犯罪者は皆そう......」
「本当だ。そもそも目が見えてないから」
何言ってるんだ?
そんなに目を輝かせて、見えてないって......。だけど、その言葉でさっきから瞳ばかり気にしていた理由がなんとなくわかった。多分俺、この男と一度も目が会ってなかったんや。
なるほど相手は見とらん。俺の早とちりやったんやな。非常に申し訳ない......とはならんやろ。自分が見えへんからって、それで人に脱ぐのを強要するのは......。
「なら先にそう言うべきじゃないですか!それに......心ではわかってても、恥ずかしいもんは恥ずかしいんです」
「ああ、そういうものなのか。あまり人とかかわらなくてわからないんだ」
いや......一般常識ですけど。服を脱げっていうのが変態発言っていうのは。
それがわからないって、やっぱりコイツだいぶヤバいやつなのかもしれない。そう思って大きなため息をつこうとしたときだった。
「じゃあ、俺の服着るか?」
男はためらいもせずにそう言った。
思わず耳を疑った。俺の服を......着るか?
それって、今度はあなたが、露出狂に?
もはや思考が追いつかなくて固まっていると、男から、月明かりよりも眩しい光が溢れ始める。
「――っ」
その非現実的な光景に驚いていると、後ろから布が頭に乗っかってくる。広げてみるとそれは大きな着物だった。だけど、最近の着物とは違う。もっと前の服だ。......というか、そっか別に服って予備あるものやねんからわざわざ脱がんくてええねんな。ちょっと恥ずかしい。
少しだけ火照った顔をなんとかしたくて、着物に埋まってみると、一瞬で甘い香りに包まれた。それで今度こそちょっとだけホッとする。
「じゃあ着替えろ。......俺は後ろを向いておくよ」
「あ......ありがとう、ございます」
「終わったら俺の方に来い」
意外とまともな所あるやん。
大きな服に腕を通してみると、やっぱり丈が余ってしまう。ぶかぶかながら着てしまうと、よちよち歩いて男の方に向かった。
男は俺の足音に反応してこっちに向き直る。その姿はさっきよりも少しだけリラックスしているようにも見えた。
それ以上は特に考えずに、ひょこひょこ近寄っていく。
いつの間にか俺は、さっきまでの流れで警戒心が薄れてしまっていたみたいだ。
「着ましたよ――っ」
「ああ、やっと触れられる......俺の『時舵』」
――ふぇ?
なんか......気のせいじゃなかったら、今抱きしめられてるんですけど......。
いやだってさっきまで臭いって......。
「やっぱり、俺の服を着せたのは正解だったな。いい香りだ。まあ......本当は裸体を抱きたかったが」
コイツっ......!
やっぱり変態は変態でした!!
次の更新は
10/26(月) 17:10です
お楽しみに_(._.)_




