星座占い
ここは帝都のどこかにあるトキの自宅。出かける前に星座占いを確認するのは、トキの毎朝欠かせない大切なルーティンである。
『続いて11位はしし座のあなたでーす! 気になるラッキーアイテムは……』
トキの星座はまだ出てこない。つまりこの時点で最下位確定なのだが、いくら待てども12位は発表されず、CMへと移り、終いには番組が終わって次の番組へと変わってしまった。
「おいおい……最下位の救済措置は何なんだよ」
◇
「ああ、それはですね。朝から気が滅入るってクレームがあったからみたいですよ」
後ほど、12位だけやらなかった事情をリリカから聞いた。聞きはしたが、納得できるかどうかは別問題であり、さすがのトキでさえ「しょうもな」という感想が即出るくらいには頓珍漢な事情であった。
「大体11位までやった時点で12位も消去法で分かるじゃないか。クレームを入れた人はそれで満足してるのかなぁ」
トキは思わず驚いてしまった。何に驚いたのかと問われれば、この世の中でベスト3に入るレベルのどうでもいい疑問が思い浮かび、瞬時に口の外へ放出された自分自身に対して、と答えるしかない。今すぐにでも先ほどの発言を取り消し、叶う事なら発言した事実すらもこの世から消去してしまいたいほどの熱に襲われたが、決してそれは叶うことはなく、むしろ生真面目で優秀な後輩のリリカから懇切丁寧に疑問への模範解答を用意されてしまった。
「してるんじゃないんですかね。知りませんけど」
「そっか、してるんだ……ならいっか!」
「ですね! 知りませんけど!」
しかし、番組に寄せられるクレームはなくなることはなかった。
12位を消したことで実質的な最下位は11位となり、次は自分の星座が11位だと朝から気が滅入るというクレームが入るようになった。
結果、数日後には星座占いは10位までしかやらなくなり、しかしながらクレームはなくならず、9位8位7位……とロケット発射のカウントダウンでもしているのかと溢したくなるような分かりやすい縮小がなされていった。
果たして今見ているのは星座占いなのか、はたまた頭のおかしい社会実験の類の何かなのか。
次第に4位3位2位……ともはや星座占いの体を為していない何かとなっていき、終いには1位だけしかやらなくなった。
ある意味最も平和的な収束を経たと安心するのも束の間、今度はおひつじ座からうお座までを順番に1位をローテーションさせているという致命的な手抜きが発覚してしまい、星座占いコーナーの存続が一時は危ぶまれたりもしたが、とある画期的な方法によって見事に朝の人気コーナーは生存を果たした。
『今日の運勢1位はおひつじ座おうし座ふたご座かに座しし座おとめ座オカネギタイムシ座さそり座いて座やぎ座みずがめ座うお座の皆さんでーす! おめでとうございまーす!』
「……うん、めでたいめでたい」




