ガチャガチャ(3)
ここは帝都の下町にある老舗駄菓子屋。軒下に連なるガチャガチャマシンの更新は頻繁に行われてる。
「あれ? いつの間に大怪獣ガチャ2なくなったんですか?」
久しぶりにガチャガチャを回そうとしたリリカだったが、その目論見は半ばで潰えた。トキと違って「コンプリートするまで回す!」などと考えるほど入れ込んではいなかったが、自分の知らないうちに消えてしまうのは、それはそれで一抹の寂しさがあった。
「知らなかったの? ま、私はコンプリートしたから別にいいんだけどね」
そう語るトキの背中は、どことなく哀愁が漂っている。得たものと同等、または遥かに超える何かを失ったかのような悲哀が感じられる。リリカは何かを察し、それ以上の事を踏み込もうとはしなかった。
「けど良かったじゃないですか。これでもうガチャを回す必要はなくなったんですよね?」
「何を言ってるんだいリリカ君。私はもう次の獲物を見つけているのだよ」
「えっ?」
トキの視線を追ってみると、「油揚げキーホルダー(全40種)」という文字に行き着いた。全国各地の豆腐店で売られている油揚げを、1/8スケールで精巧に再現したと言うのがコンセプトとのこと。値段は今の時代では珍しく1回100円。こんなのにお金を使うくらいなら本物の油揚げを買った方がいいと思ったが、口に出した後の状況に思いを走らせると、空気を読んで黙るのが最善という結論に至った。。「あと半分でコンプなんだよ」とトキが楽しそうなのだから仕方ない。半分と言ってもまだ20種類もあるじゃないか、そんなことも頭によぎったが、言わぬが花ということもある。この世はお花でいっぱいだ。
「ほらほら見て見て~、また新しい油揚げが出たよ。被りもいっぱい出たけどね~」
いつの間にか10連ガチャを回していたトキ。1000円費やした成果を見せてもらうも、リリカにはどれもこれも同じ油揚げにしか見えなかったが、東西南北地方ごとに特色があると熱弁してくれたおかげかどうか、話終わるころにはリリカの心も大きく動かされていた。どれほど動かされたかと問われれば、「今日のお昼ご飯はきつねうどんにしようかな」くらいだろうか。とにかく費やした金額以上の成果があったことは間違いない。
「リリカちゃんも回してく?」
「そうですね、前向きに検討しておきます」
局所的にカルト的人気を誇る油揚げガチャ。その沼は浅いようでいてとても深く、今日もまた一人、新たなダイバーが生まれようとしていたとかいないとか。




