第46話 急所
霊の世界には
距離や時間は
有るような無いような、
あまり
ハッキリしていないがあるらしい。
サイボーグ隊は
アルタミラのいる位置を
指定されると瞬時に
その場所へ到着した。
突然現れたサイボーグ隊に、
ザリエルは一瞬驚いて
目を見張った。
いつも曇っている暗黒の意識を
通して見ているザリエルには、
あまり明確に物事を
把握出来ていない部分が
多かったのだろう、
油断すると
遅れを取ってしまうのだ。
しかし
気を取り直すと即座に
「戦闘体制をとれ。
そいつが逃げないように
つかまえておけ。」
と側近の兵士に
指示をだして、
アルタミラを
暗黒軍の兵士達の中へ
紛れ込ませて隠してしまった。
「人質を解放しなさーい。
人質を解放しなさーい。」
笑った顔のサイボーグが
横に展開した陣形で
人質解放を促して
呼びかけていたが、
ザリエルは無視して動かなかった。
お互い睨み合ったまま
しばらく時間がたった。
ザリエルは無表情なサイボーグの笑い顔に
だんだんイライラしてきた。
腹が立って
我慢が出来なくなってしまった。
そして、
それが耐えられなくなってしまった。
「攻撃ー」
イライラが高じて
ザリエルが叫んだ。
「ウオー」
兵士達が武器を構えて
サイボーグ達に攻撃を始めると
真っ黒なスモッグが
兵士達の霊体から噴出しだして
あたり一面が暗くなってきた。
凶暴凶悪な
嵐のような念力が渦巻いて、
兵士達の間に取り囲まれている
アルタミラは気分が悪くなり、
吐き気を催して
うずくまってしまったが、
兵士達はアルタミラを
乱暴に引きずり回ますことを
やめようとはしなかった。
ずーっと、
このまま
いつまでも解放されずに、
幾度も斬られて
ひどい目に会わされ続けるのではないか、
という不安と恐怖に
アルタミラは苛まれて、
自由に体を動かせないほど
心と体が硬直していた。
暗黒軍とサイボーグ隊の
壮絶な戦いが繰り広げられ、
ザリエルの脇で
サイボーグと戦っていた暗黒兵が
斬られて体が前のめりに倒れるときに、
兵士の剣先が
地面に向かって
突き刺さった。
ちょうどそこに
サイボーグの右足が出ていた。
その足の甲を
剣が貫いてしまった。
サイボーグは
兵士の意識を読んでいたが
無意識の動きは読めなかった。
そのため
足に剣が来るとは
予測がつかなかったのだ。
活発に動き回っていたサイボーグの動きが
パタッと
止まってグラリと仰向けに倒れたまま
動かなくなってしまった。
サイボーグの右足の中には
エネルギーを受け取り、
情報を送受信する装置が
組み込まれていたのだ。