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第47話 猪

サイボーグは



切られても刺し貫かれても、



何のダメージも受けず



不死身だった。



ザリエルは内心困っていた。



しかし、



目の前で偶然にも



足の甲を刺されて



倒れたサイボーグを見ると



狂喜した。



敵の弱点を



初めて発見したのだ。



それに兵士達の動きを



ことごとく読まれて、



手も足も出せなかったが、



戦っているうちに、



サイボーグが



兵士達の動きを



一度に読むことが出来るのは



三人までで、



四人以上になると



読みに誤差が生じてくる



ということもわかってきた。



ザリエルは



最前線から少し下がって



すぐに各部隊に



伝令を走らせて、



五人一組で



同時にサイボーグを攻撃し、



隙をついて



右足の甲を斬るように



伝えさせた。



ザリエル隊の攻撃が変わると



サイボーグが倒され始め、



サイボーグ隊が



徐々に劣勢になってきた。



ガリレ博士は



サイボーグからの通信が



次々に



不能になってきているのを知って、



探索ロボットに(さぐ)らせてみると、



サイボーグがだいぶ



(こわ)されていることがわかった。



手遅れにならないうちに、



緊急に対策を



取らなければならない。



ガリレ博士は



しばらく考えたが、



打つ手を思い付かず



思案にくれていた。



天上の世界は普通、



外敵がいないため



サイボーグを作っても



命懸(いのちが)けの実戦は皆無で、



実際どのくらい



その能力が通用するのかは



よくわからないのだ。



そのため、



このように



死に物狂いの相手と



戦うようになると、



弱点があらわになってしまう。



天上の世界の下のほうでは



どうしても



研究の詰めが甘い



ということなのであろう。



最新鋭のサイボーグを



使ったのだが、



それが通用しなくなって来ている。



となると



ガリレ博士としては



残っているサイボーグは



性能が(おと)っているため、



それを出しても



使い物にはならないかも



知れないと思っていた。



他の研究員達にも



いい考えは思いつかなかったが、



先ほどから



一人で何か



物思いにふけっていた



タカノマユが



博士に顔を向けると



「博士、



野性動物の意識を



現象化させて、



それを使うのはどうでしょう。



例えば、



(いのしし)の大群を



突進させるとか。」



と言った。



博士の目が、



はっ、と見開いて



「おお、



それはいいアイデアですな。



早速それを使いましょう。



タカノマユ君、



いますぐ



野性の猪の意識を



大量にコピーして



現象化させて下さい。」



そう言って



ガリレ博士はタカノマユが



作業に取り掛かろうとしている



後ろ姿を関心した顔で



(なが)めていた。



タカノマユはすぐ



探索ロボットに



特別獰猛(どうもう)な野性猪を検索させた。



探索ロボットが高速で



広範囲に検索して行くと



次々に獰猛な猪が見つかっていく。



見つかると



それらの猪の意識を



素早くコピーして



即座に猪達を現象化させる。



しばらくすると



猪の大群が出来上がった。



猪達の目つきは



いきり立って鋭く、



体の動きは素早(すばや)い。



ロボットは短時間で



仕事を終わらせてしまった。



「博士、



猪の大群が出来上がりました。」



タカノマユが博士に言った。



「おお、ご苦労様でした。



早速突進させましょう。



タカノマユ君、



攻撃お願いしますよ。」



博士は彼女の能力に



絶大な信頼を置いて命じた。



「はい」



タカノマユは



元気いっぱいに返事をすると



張り切って、



猪達に指示を送る装置を



作動させると、



大群を動かし始めた。



猪達は



先頭から移動を始めたかと思うと、



それがすぐさま



全体の動きとなって、



瞬く間に土埃(つちぼこり)を巻き上げる



怒涛(どとう)の流れに変わった。



「人間はどういうものであれ、



大群が押し寄せて来ると、



圧迫と恐怖を感じるものだ。



暗黒軍はパニックに



(おちい)るだろう。」



ガリレ博士は



期待と満足の表情を



浮かべて言った。



猪の大群は道なき道を、



弾丸のように突進して、



巨大なうねりが



地響きとともに



障害物を()ぎ倒しながら



突進して行く。



そのスピードは(すさ)まじく、



あっという間に遠のいて行って、



かすかな地響きと土埃が



余韻(よいん)を残していた。



静寂が訪れて、



しばらくの間、



探索ロボットから



送られてくる立体映像を



監視していた研究員達が



突然声を上げた。



「なんだ、これは。」



「博士、これは何でしょう。」



ガリレ博士も画面を見ていたが、



声も無く



食い入るように



凝視していた。



いつのまに現れたのか、



猪の大群の先頭を



陽炎(かげろう)のように



()らめく、



ひときわ目立った



大きな金色の光りを



放っている猪が、



(すべ)るように



飛んで先導して行く。



その背中から



三日月形の強い光りが



放射されていて、



その上に



まばゆい光りを放った



女神が乗っていた。



女神は青い(ころも)



金色の甲冑(かっちゅう)()けて、



顔の両側に



長い牙が突き出た



猪の化け物ような顔が



現れたり消えたりしている。



背中のほうから



腕が三対出ていて、



弓や羂索(けんさく)



金剛(こんごう)(しょ)



大針(おおはり)、等が



チラチラと



現れては消えていた。



摩利支天(まりしてん)だ。」



ガリレ博士が画面に



くぎづけになりながら



つぶやいた。



「えっ」



一同が驚愕(きょうがく)の声を上げた。



天上の世界にいても、



摩利支天を見るなどということは



ありえないことなのだ。



それがいま



目の前にいるように、



立体映像に



写し出されている。



あまりの奇跡に



場が興奮に包まれて、



これから



どのようなことが起こるのか、



固唾(かたず)をのんで



全員が食い入るように



画面に見入っていた。


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