第123話 太閤
突如、空間に真っ黒な靄がかかったと思うと
多数の人影らしいものが「ぼーっ」と現れた。
あの「キーン」という金属音は
これらが現れるための強いエネルギーが
そこに作用したためなのかも知れない。
人影はしばらくするとハッキリしてきた。
大軍団だ。
中央にひときわでかい男がいる。
顔に能面のような真っ赤な顔あてが
目と鼻を覆うようにつけられ、
真っ赤な兜のてっぺんから高くゆいあげた髷が
尻尾のように突っ立っている。
そして同じように真っ赤な鎧を身につけ、
馬かと思うほど大きな黒狐に跨がって
イタチを悠然と見下ろしていた。
居並ぶ兵士達も
全員鎧兜に身を固め、
手にはそれぞれ様々な武器を持っている。
それぞれの顔は真っ黒な顔当てが目を覆って、
無表情な顔がじっとイタチを威圧するように見ていた。
イタチは圧倒されながらも
「おやっ」と目を見張った。
兵士達の体は人間だが、
顔はなぜか口が前に突き出ていて大きい。
「これは狐だな。この兵士達は全部狐なのか。
人間の兵士はどこにいるのだろう。」
イタチは不思議に思った。
がそれに気付いたことがわかると
狐達は見透かす目をしてニヤニヤッと笑った。
突然、「あーっ、アブブ太閤殿下だ。」
イタチを囲んでいた中の誰かが叫んだ。
「えっーっ。」
一斉に声が上がると、
慌てふためいて
その全員がその場に平伏した。
狐達はそれを見ると勝ち誇った目をして
口が嘲笑うように動いた。
「これはどうしたことなんだ。
これらの人間は太閤付きの狐達より地位が下なのか。