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第113話 瓶

イタチはサホミが土塀を抜けられないのを見ると、



また戻って来た。



逃げたらひどい目に遭わされるという



強い恐怖心がサホミの意識の中で



土塀を実体化してしまっていて



抜けられないのだ。



唯心所現ゆいしんしょげん



ただ心に想っているところのものが現実になる、



ということらしい。



その恐怖心を離れれば、



何の障害もなく抜けられるのだが、



一度恐怖にとりつかれてしまうと、



そこから離れるということは



そう簡単に出来ることではない。



どうしたらいいのか。



イタチは何かいい智恵はないかと



いろいろ想いを巡らせてみた。



この塀を越えることが出来るだろうか。



イタチはその辺を走り回って



はしごや箱を探したが見当たらなかった。



そのうちどこからか



粘土を固めて作った蓋付きのかめを抱えて戻って来た。



何に使うつもりなのだろう。



サホミは不思議そうにイタチのすることを見ていた。



イタチは金色の蜘蛛くもを取り出すと



そっと土塀にわせた。



蜘蛛はピタッと垂直の壁に張り付いて



少しの間微動だにしなかったが、



次の瞬間サッと素早く動き出して



土塀を上って行った。



一方、酒盛りをしていた連中が騒ぎ出している。



またいざこざが始まったらしい。



「お前らは仕事も出来ねえで俺達に指図さしずするつもりか。



いつも獲物を取って来るのは俺達じゃねえか。



何にも出来ねえ奴が口を出すな。」



「なにー。てめえだけが一人で仕事してるみてえな言いぐさだな。



俺はそういう奴が一番気に入らねえんだ。



生かしちゃおけねえ。」



「ふざけんじゃねえ。



俺達が無能なお前らの分までやってやってるんだ。



能なし野郎がしゃべるな。



お前を見てるとイラつくんだよ。馬鹿が。」



一言二言ひとことふたこと言い合っているうちに



場が激昂げきこうして来た。



すると全員がそれに巻き込まれて、



あっと言う間に怒りに支配されてしまった。



そしてそれぞれが武器を持ってすさまじい乱闘になった。



イタチはかめに細工し終わったところで、



ハッと動きを止めて耳を動かした。



誰か来る。

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