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第111話 板壁

一方、石の地蔵菩薩にしがみついたまま



牢屋に閉じ込められた女は



縛られている縄をほどこうとあがいていたが、



がんじがらめに締められていて



身動きが取れなかった。



もう長時間石の地蔵さんに



縛り付けられたままの状態で



放置されていたが、不思議なことに、



石の冷たさはなく優しいぬくもりが感じられる。



永い間、抜け出せない冷たく冷え切ったこの世界では



感じたことがない感覚だ。



それははるか遠い昔の幸せだったころの記憶が



よみがえって来るような、



何とも懐かしいものだった。



突然、ズルッ、ズルッと動いた。



「あっ」



思わず声が出た。



何だろう。



石なのに何故なぜ動くのか。



怪しんでいるうち、



牢屋の板壁に少し穴が開いているところまで移動して来た。



するとお地蔵さんの頭が毛むくじゃらになって、



口がぬーっと前に伸びた。



狸だ、狸が化けていたんだ、と女は思った。



訳がわからないまま、女は身を委ねている。



毛むくじゃらの口が



少し破けている板壁の穴をかじり始めた。



すごい力だ。



瞬く間に人が抜けられるほどの穴が出来上がった。



女が驚いていると、



不意に縄がバラリッとほどけて、



お地蔵さんがイタチの姿になった。



「あっ」



女はびっくりして跳ね起きた。

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