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僕が町へ帰ると、マリーやルキ、子供たちが一斉に手を振って駆け寄って来る。
「ワニトカゲー!!」「リットさん!」「ドラゴンさーん!」
思わぬ出迎えに僕は驚きながらも、みんなの無事がわかってホッと胸を撫で下ろした。
遅れて、大人たちもやって来た。
「無事だったんですね。よかった」
「みんな心配してたんだ。あんなおっかねえのに追っかけられて」
マリーとルキが真っ先に声をかけてくれる。二人の言葉にうんうんと周りの大人たちも頷いた。
けど、少しだけ僕は居心地が悪かった。
「僕、一度はみんなを見捨てて逃げたのに……」
そう、思いっきり背を向けて逃げ出したのだ。
だから、僕は正直彼らに合わせる顔がなくて、俯いてしまう。
すると、二人は顔を見合わせた。
「でも、戻って来てくれた!」
「そうだ、あんな奴と戦うのなんて怖いに決まってるだろ!」
マリーとルキが僕のために精一杯声を張り上げてくれていた。
「え?」
思わず僕は顔を上げた。
僕はみんなの期待を裏切ったはずなのに。
でも、二人は僕を責めるような気配がまるでない。
「そうだよなぁ、水竜様まだ子供だもんな。あんな筋肉ダルマと戦うのは怖いよなあ……」
「水竜様に期待し過ぎてたな、俺たちもしっかりしないと」
大人たちも顔を見合わせて、僕に向かって頭を下げ出す始末。
てっきりみんなから責められると思っていたのに、思ったより世界は暖かかった。
そうこうしていると、町の人たちの壁を割って町長がやってくる。
「あの、地竜様は?」
町長さんは相変わらず額の汗をハンカチで拭ってオロオロとしている。
そうだよね、気になるよね。
「なんとか追い払いました。盗賊は雇われてただけだから好きにしていいって」
「そうでしたか……、ありがとうございます、水竜様。どうお礼していいものか……」
町長は僕にペコペコと頭を下げ出す。
でも、それにはまだ早い。
僕たちにはまだやらなきゃいけないことがある。
「そんなことより──」
盗賊にかけた凍結魔法を一人ずつ解いてくから、捕縛の準備を進めてほしいことを伝えると、町長はコクコクと頷いて大慌てで町の警備の人たちを呼びに飛んでいくのだった。
「やるじゃん! ワニトカゲ!」
「っ!」
ルキがバシバシと背中を叩いてきて、脇腹に鋭い痛みが走る。
痛みに顔が歪んで膝をつきそうになる。
そういや、岩で脇腹を抉られていたんだった。
急いで戻ってきたんだけど、ちゃんと治療ぐらいすればよかった。
「ゴメン! ケガしてたのか!?」
ルキが慌てて、他の人たちも心配そうにしているものだから僕は手で制した。
「大丈夫です。これぐらい竜ですから魔法ですぐ治るので」
笑顔をあつらえる。
みんなが無事なら、こんなのいいんだ。
けど、大人たちは血相を変えた。
「いやいや、こっちで休みなさい!」
「あいつらを牢に運ぶまで時間なら十分ある!」
「というか、あんな奴ら急いで魔法解かなくたっていいさ!」
アレよアレよという間に、僕は近くの無事だった家に運び込まれて、椅子に座らされた。
周りでは、大人たちが代わる代わる包帯やら医薬品やらお菓子やらを持ち出しててんやわんやしてる。
僕は回復魔法を自分に施しながら、慌ただしくする大人たちをぽけ〜っと見つめていた。
多分、打算じゃなくて、町の大人たちが本気で親身になってくれていて。
こそばゆくて。
「へへへっ」
自然と笑みが溢れた。
この時初めて、僕はこの町の大人たちを心から受け入れることができたのだった。




