家に帰りたい~パペットのハナちゃんの場合
節子5歳。ある日の昼間、廃墟で兄とその友達とかくれんぼをしていた。
節子は大事にしていたクマのぬいぐるみと一緒に廃墟の物陰に隠れていた。しかし、急に兄の友達の1人が廃墟の側の空き地で、かくれんぼではなく、違う遊び(縄跳び、ボール遊び等)をやりだした。すると、5歳の節子もつられていつの間にかその遊びをして、一緒に持ってきたぬいぐるみのことを忘れてしまった。
後から節子の持ってきていたぬいぐるみが無いことに気づいたが、節子はただ泣きじゃくるだけ、兄達もおろおろするだけで、廃墟に隠れていた節子のぬいぐるみは、そのまま置き去りにされていた。
そんなこんなしているうちに、節子も節子の兄達もクマのぬいぐるみのことはいつの間にか忘れてしまっていた。
そのクマのぬいぐるみの特徴は、薄茶のクリクリっとした黒目の可愛らしいものだった。手も足もちゃんとついてはいたが、人形劇に使えるような、手を入れたら動かせるような、パペット人形のような作りになっていた。体長20センチの2頭身の作りだ。
ハナちゃんという名前だった。
さて、時は変わり、"毛むくじゃらの妖精ユチオ"の、ピンクと黄色の異空間である。
パペット人形のハナちゃんがユチオの元にやってきた。
この異空間では、人形のハナちゃんも自分で動けるし話が出来るのだ。
「家に帰りたいんだ」
ハナちゃんは、自分より少し(3~5cm?)身長が小さなユチオに向かってそう告げた。
ユチオは、籠に星形のかけらのような物をもくもくと拾って入れていた。
「君も手伝ってくれるかい?」
ユチオは、ハナちゃんにそう言うと、ハナちゃんも一緒に星形のかけらのようなものを一緒に拾いだした。
「ずっとここでこのようなことをしているの?」
拾いながら、ハナちゃんはユチオにそうたずねた。
「そうだよ」とユチオが答える。
そうしてしばらく2人は籠に山ほどの星形のかけらのような物を集めて積み終わった。
「ありがとう。これで君の願いを叶えようか」
ユチオがそう言うと、ハナちゃんは嬉しそうに笑った。
節子は77歳になっていた。夫や兄達も亡くなり、自宅であるマンションに娘や孫が遊びにきていた。
自宅にピンポーンとインターホンが鳴った。
娘も手が離せず、5歳の孫がかわりにインターホンに出ると、インターホンにうつるカメラに小さなクマの人形が置かれていた。
「何だろう?」
節子が孫とマンションの入り口の方まで歩いて行き、クマの人形(パペット人形のハナちゃんである)を手に取った。
「ん?」
「何だろう???」
「不思議だねぇ?」
パペット人形のハナちゃんは、節子が自分を覚えているか、めっちゃ不安だった。
節子が5歳の時のことだからだ。
覚えていなくて捨てられたら、またあの奇妙な妖精の所へ行こう、そう思っていた。
「あっ、ハナちゃん!?」
節子はそう言い、ハナちゃんをそのまま自宅に招き入れた。
節子は、家の古い段ボールから、もう1つの同じパペット人形を出してきた。
ハナちゃんは、『あっ!』と思った。
タナちゃんだった。
タナちゃんは、節子の兄のパペット人形だった。見た目もまったく同じパペット人形で、兄に1つ、妹である節子に1つともらったものだった。
72年の時を経て、離ればなれだった2つのパペット人形が1つの所に集まった。
どちらのぬいぐるみもかなり古くなってぼろぼろににり、すすけていたが、それでも心なしか嬉しそうだった。
節子は、なぜ昔になくしたパペット人形があるのか不思議だったが、それでも見つかって嬉しかった。顔の表情などたしかにハナちゃんだった。
「奇妙な妖精で悪かったね」
ユチオはふくれっ面をしながら異空間でつぶやいた。




