元には戻せません~ボン特別編
ユチオの仲間のボンは妖精で、現在、人間の息子と地球に暮らしている。
ある日、ボンに仕事の依頼が来た。
それは、あるお金持ちの女性からで、獣に変わってしまった夫を元に戻して欲しいというのだ。
ボンは地球では中年の男性の姿をしているため、姿を見られても驚かれない。
ボンは早速お金持ちの女性の家へ訪ねて行った。
めちゃくちゃ大きいお屋敷の扉の前に立ち、ここはホールのようだと思った。
チャイムを押すと、疲れ切った様子の女性が出てきた。この人がボンを呼んだここの家の奥様なのだろう。
奥様に通されて部屋の奥に着くと、檻の中に毛むくじゃらの猛獣がいた。
「ウゥ…」
ボンは猛獣をみて、やはりユチオがやったのだと気づいた。
「お願いします!様々な医者や祈祷士や占い師などに頼んでも無理だったのです!お金ならいくらでも払います!どうか元に戻して」
「600万…」
「600万!?600万ですって!!そんな法外な値段…」
「元に戻すのは無理です」
髪がぼさぼさのつぶらな目の中年男姿のボンはそう告げた。
その言葉に奥様はすぐに
「…いいえ、出せます!出します!!600万!!1000万でも2000万でも1億でも、いくらでもかまいません!!だからお願い、あの人を元に戻して下さいお願いします!!」
「元に戻すのは無理です」
中年男はもう一度そう告げた。
「なぜですか!?」
奥様のその声は悲鳴をあげるような金切り声だった。
「元の姿に戻すのに600万かかるというのは嘘です…私でも戻せません。おそらく、この獣になった人は、とても罪深いことをしたのです…」
諭すようにボンはそうこたえた。
「…」
奥様は少しハッとしてからこう言いました。
「私もあの人がやっていることを見て見ぬふりをしていました。でも獣になったあの人を見て気づいたんです。この人と共に生きたいのだと…!!」
「わかりました」
ボンはある提案をした。
「…!!」
奥様は、少し考えてから、すぐ了承してきてこう言った。
「子供が二人います。数日待って欲しい」
ボンは日にちを決め、その日にボンが再び訪ねて行くことにした。
花見小次郎と花見華子は、小学生なのだが、母親から数日後に家族で遠い遠い外国へ引っ越しをすると言われていて友達に告げた。
寂しくなるねぇ
メールは出来る?
お手紙届く?
わからない…
数日経ったある日、ボンは奥様の家のチャイムを押した。奥様と獣、そして小学生の男の子と女の子、1人ずつも荷物と一緒にいた。
ボンは呪文を唱えた。その途端、時空が歪み、目の前が明らかに違う世界になった。
そこは、獣にされた人の姿と全く同じ姿の大きな毛むくじゃらの姿の生き物達が暮らしている世界だったのだ。
獣にされた奥様の夫はもちろん、奥様や子供達も、毛むくじゃらの姿になっていた。
そして唸り声をあげながら、他の毛むくじゃらの生き物達と会話をしているのであろう、そして、ボンが見ても、誰が誰だかわからなくなってしまうほど見事に馴染み、毛むくじゃらの世界に消えて行った。
「どうか幸せに」
ボンはそうポツンと告げた。
ボンは家に帰ると、人間の世界で仕事をしてきた人間の息子が夕飯を買ってきていた。
「父さん唐揚げ買ってきたよ、一緒に食べよう」
「わぁ!うまそうだ!」
ボンとその息子は楽しく食卓を囲んでいた。




