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願い事が叶う星形の物体  作者: 後東衣桜利


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11/16

結婚したい~ある不幸な女性、あむの場合

北海道札幌市のある築年数の古いアパートに女性が独り暮らしをしている。

この女性、34歳にもなるのに人を疑うことを知らない素直で一途な性格なのである。今付き合っている彼氏が奥さんと別れて自分と結婚してくれると本気で信じているのだ。

6月になり札幌市の気温は肌寒い時間帯もあれば、むちゃくちゃ暑くなることもある。カラッとした暑さが売りなこの地域だが、最近はベタベタした暑さになることもあり、異常気象がきたと周りでささやかれている。

カンカンカンカン…二階の階段を登ってくる音がした。彼だ!女性は忠犬のように待ちわびていた彼氏を出迎えるべく自宅の玄関のドアを開けた。

彼氏は機嫌が悪そうだったが、仕事で疲れているのだろうと女性は思った。

彼氏とは付き合いが長く20代前半の頃から付き合っている。当時から、夫婦仲は悪く、彼氏は奥さんからの暴言に苦しめられていると言っていた。最近、お金の無心をされて、やんわりことわりの意思表示をしたら、資金繰りのストレスなのか、彼氏が会うたびに機嫌が悪くなったのである。

今日はそれでも彼氏の手には小さなケーキの箱が握られていた。仏頂面で無言でそれを女性に渡す彼氏。

「わぁ~ありがとう!あら…1つ?」

箱には、ショートケーキ一つしか入っていなかったのだ。

「1つじゃ悪いかよ!」

彼氏は突然激怒し始め、女性に手渡したケーキを箱ごと取り上げ床にたたきつけた。

そして彼氏はそのまま帰ってしまったのだ。

女性は悲しい気持ちになった。ケーキが1つと言ったのは、彼氏と2人で食べたかったからなのに。いつも彼氏は女性にだけ買ってきて自分は食べずに見ているだけである。今日6月28日で女性の誕生日なのだ。誕生日ぐらい2人で食べたかったのである。

床にぐちゃぐちゃになったケーキを見つめ、女性は力が抜け、床にへたりこんだ。目からは涙が溢れた。

そこへ彼氏が戻ってきた。

「600万貸してくれよ!沢山貯めてんだろ…」

「…無理よ。お金無いもの…」

「なら、俺のためならサラ金から借金してでも借りてこいよ」

「駄目よ、サラ金は金利が高いし、稼ぎの少ない私は返せないわ。」

「俺を愛してるんだろ?風俗でも何でもして返せば良いだろ!?」

「あなたの借金じゃないの。あなたが副業でもして返したらどうなの?」

「あむ…!お前いったいどうしちゃったんだよ!そんなこという女じゃなかっただろう!?」

「…ユチオがそう言えって」

「ユチオ!?誰だそれ!男でも出来たのか!?」

「ううん…友達よ」

静けさの中にそっと15cmのクリーム色の毛むくじゃらの謎の生き物がちょこちょこ出てきて女性の手の平の上に抱かれていた。

「これが…!?」

彼氏がユチオに触れようと手を伸ばすと、

「イタッ!!」

ユチオが彼氏の指をかじった。

何か彼氏の身体の中に激震が走った。

直感的にものすごい恐怖を感じ、彼氏は今すぐにここから離れるべきだと思った。

彼氏は女性の部屋の鍵であろう合鍵を女性にぶつけるように投げ返してきた。

「もう来るか!!こんな所!!」

「待って!!」

彼氏は脇目をふらず逃げるように走って帰って行った。

「待って!!修ニ(しゅうじ)さん!!」

女性は二階のアパートの玄関から飛び出し、階段を急いで降りて彼氏を追ったが彼氏は1度もあむを見ずに今日は乗ってきたであろう車でものすごいスピードで走るように去って行った。その後ろ姿からは女性にほんのこれっぽっちも未練がないようだった。

ユチオは投げ返した鍵の所にひょこひょこ歩いてこう口ずさんだ。

「くだらない男だね」

女性はアパートの外でいつまでもいつまでも彼氏のいなくなった空間を見て泣いていた。

最初は優しかった彼氏。あむは一人っ子で女子高育ちで、男友達もいない、男性経験のない、人生で初めて付き合った彼氏なのだ。仕事先で彼氏に初めて会った時に2人の間にとても心地よい風が流れたのだ。きっとこれから良い関係が築けると思ったのだ。

それがいつの間にか、女性が寂しい思いをすることが増えた。独り暮らしのアパートで泣くことが増えた。いつか必ず奥さんと別れてくれる。彼氏を信じているけど…すごく寂しい…。誰にも言えなかった。

ある時、この毛むくじゃらのユチオがあむの部屋に現れた。ユチオは自分を妖精だと言い、あむは彼氏とのことをユチオに話すようになった。ユチオという妖精は女性の相談相手になってくれたのだ。

最近になり、彼氏がお金の催促をしてきた時、ユチオは、決してお金は貸してはいけない、と言った。だからあむはその通りにした。


あむは、10円玉位の大きさの星形のぷにぷにしたものを自分に渡すユチオにこう言った。

「ユチオ、私今日で34歳になるの。もういい加減、結婚をしたいのよ…」

「アイアイサー!!!」


ユチオは明るく返事をし、すっとあむの見合い相手の男性の写真を出してきた。

「!!」

「これは!?」

「妖精の裏情報ツールで見つけてきた、君にピッタリの相手だよ」

写真の中の人は、あむと共通点の多い、独身のまともな男性だ。外見も良い。


この後、あむはこの相手と結婚をして子供を沢山作って、末長く幸せに暮らすのだ。



一方、修二というあむの彼氏だった、男。

修二は、あむをなめてかかっていた。もちろん最初は、あむというこの女性に運命を感じて、独身だと言って騙してでも付き合いたかった。既婚者だとばれてからは、妻が暴言を吐く、いつか必ず妻と別れると嘘をついた。実際の妻は修二の顔が好きで中身はどうでも良かった。妻の実家が大金持ちで、妻も稼ぎが多く、修二が浮気をしてようが性格が悲惨だろうが、全て許した。子供がいるので別れない、顔が良いので他は全て許す、結局のところお飾りの旦那なのだ。

しかし、最近修二に他の若い浮気相手の女性が出来てあむが邪魔になった。若い浮気相手の女は金がかかる女でブランド物などをねだってくるようになった。修二はその女に、かなり貢いで、自分の小遣い、つまり金が足りなくなった。

何でも言うことを聞く、バカな女のあむの出番だったのに、あの女、使えない。


自宅に戻った修二。車を自宅の車庫に停め、家の中に入った。

ホールのような大きなお屋敷だった。

「あなた、おかえりなさい」

修二の妻が玄関に出迎えにきた。

「ただいま」

先ほどの毛むくじゃらの生き物にかじられた指が痛い…!!

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

修二は、全身から毛がもじゃもじゃ生えてきて、ユチオのような毛むくじゃらのイェティになった。大きさは成人男性の大きさであるが。

「あなた!?」

『ウゥ…ウゥ…』

修二の口からは獣言葉しか出てこない。修二は人間から、謎の生き物へ変身した。

修二の顔だけ愛してる妻は修二を見放すのだろうか…

それとも…?























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