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国を救った英雄は「褒美に聖女が欲しい」と言った  作者: 弥生紗和
第3章

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第69話 使い魔に頼みごと

 フォリーがウルティオと去ったあと、リアとゼインは来た道を戻っていた。リアは大人しくゼインの後ろを歩いていたが、ずっと心が晴れない。

 ゼインは何も喋らず、ただ歩いている。彼の背中から感じる怒りと悲しみは大きい。森を出てしばらく街道を歩き、もうすぐ村が見えてこようかという頃、リアはふと足を止めた。


 後ろについてくるはずの足音が聞こえなくなり、それに気づいたゼインは振り返った。離れたところにリアがぽつんと立っていて、じっとゼインを見ている。


「どうした? リア」

「……私、やっぱり二人を追いかけます!」


 そう言い残し、リアは踵を返した。ゼインは焦り「おい!」と声をかけながらリアを追う。あっという間にリアに追いつき、ゼインはリアの腕をぐっと掴んだ。


「今さら追いかけても、もうどこまで行ったか分からんぞ」

「でも、急いでいけば追いつくかも」

「無駄だ。あいつは自分でウルティオを選んだんだ」


 更に言い返そうとしたリアは、ゼインの顔を見て息を飲んだ。

 ゼインの顔はリアが今まで見たことのない、深い悲しみに覆われたような表情だったのだ。


「……ゼイン様。やっぱり追いかけましょう。フォリー様と一生会えなくなってもいいんですか?」

「俺は……あいつに酷いことを言った。あいつは俺を許さないだろう」

「だとしたらなおさら、謝りに行くべきです!」

「だが、魔族の住処はどこにあるか分からん。あいつらがどこにいるか……」


 リアはゼインの腕を強く掴んだ。


「……ならば『使い魔』たちに、迎えに行ってもらいましょう! 彼らならフォリー様のところまでたどり着けるはずです!」


 ゼインは「使い魔……そうか」と目を見開いた。フォリーが使役している『使い魔』たちは村のすぐ近くの森で暮らしている。人間の言葉は話せないが、簡単な意思疎通はできる妖精たちだ。主人であるフォリーの居場所を探し当てることは、使い魔にとっては容易いことだ。


「リア。村に戻ったらすぐに『使い魔』たちに会いに行こう」

「はい!」


 ゼインの表情に明るさが戻り、リアの顔にも笑顔が戻る。二人は村へと急いだ。


 ♢♢♢


 村に戻った二人は一旦教会に戻った。リアはゼインを自分の部屋に招き、そこで自分の机に彼を座らせる。


「何だ? 急いでるのに」


 ゼインは怪訝な顔でリアを見た。リアは机の引き出しを開け、インク壺と便箋を彼の前に置き、羽根ペンを差し出した。

 

「今からフォリー様へ手紙を書いてください。使い魔に預けて渡してもらうんです」

「俺が? ……いや、手紙はリアが書いてくれ」

「何を言うんですか? 私が書いたら意味がないじゃないですか。ゼイン様が書くんです!」


 リアは目を吊り上げて怒った。ゼインはリアに怒られ、渋々筆を取る。

 

「……手紙を書くなんて、フォリーに読み書きを習って以来だな」

「フォリー様に習ったんですか?」

「ああ。あいつは村に来てから、村人たちに読み書きを教えてたんだ。俺もあいつに教わった」

「そうでしたか……」


 リアはゼインが背中を丸めてちまちまと字を書いている姿と、それを教えているフォリーの姿を想像して、思わず笑みがこぼれた。

 


 手紙を書き終わり、リアとゼインは村の近くの森へ急いだ。使い魔たちの住処へ到着し、リアは彼らの住処がある木の上に向かって声をかける。


「みなさん、お願いがあるので出てきてもらえませんか?」


 木の上にある彼らの住処は、枝や葉を組んで巣穴のような形にしたものだ。中には村人からもらった毛布や、木の枝で作った人形のようなものが飾られている。彼らにとっては快適な空間だ。


 少し間があって、使い魔が顔を覗かせ、続々と木から降りて来た。リアとゼインはあっという間に使い魔たちに取り囲まれる。


「実は、あなたたちの主人が魔族の村へ行ってしまったんですが、場所が分からないんです。そこであなたたちにお願いなんですが、フォリー様を連れて帰ってきて欲しいんです。この手紙を預けますから、フォリー様に会ったら渡していただけますか?」


 そう言ってリアが差し出したのは、フォリー宛ての手紙である。使い魔は手紙を受け取るとじろじろとそれを眺めた。ひっくり返したり匂いを嗅いだりして、他の使い魔に見せている。


「おい、預けて大丈夫か?」

「大丈夫かと……」


 疑っているゼインと、信じてはいるが少し不安なリア。使い魔たちはごにょごにょと人間には分からない言葉で話し合っている。すると一匹の使い魔が木の上に戻り、小さなリュックを背負って戻ってきて、手紙をリュックの中に入れた。


「ありがとう。フォリー様を必ず連れて帰ってきて欲しいんです。よろしくお願いします」


 リアは使い魔たちに頭を下げた。使い魔たちは次々とリュックを持ってきて背負った。どうやら全員でフォリーを迎えに行くと決めたようである。彼らはくんくんと鼻を上に向け、何かを嗅ぐような仕草をしたあと、次々と木の上に登って木から木へと飛んでいった。


「行ってらっしゃい、お気をつけて!」


 リアはあっという間に見えなくなった使い魔たちに声をかけた。ゼインも「頼むぞ」と声を上げる。


「……きっと、フォリー様は帰ってきますよ」

「そうだといいがな」

 

 あとは彼らを信じて任せるしかない。リアとゼインは村でフォリーの帰りを待つこととなった。

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