少女
私たちは同時に振り返った。
路地の入り口に、ひとりの少女が立っている。
年は私たちと同じくらいだろうか。
肩ぐらいの淡い茶色の髪を揺らしながら、こちらをじっと見ている。
そして、視線は私たちを飛び越え黒猫へと向けられた。
「その猫、ケガしてるの?」
「そうなの。前足をケガしてるみたい」
「痛そう……」
そう言って、ゆっくりと猫へ近づいていく。
私は思わず声をかけた。
「待って。近づくと逃げるわ!」
「え?」
「さっきからずっとそうなの」
「そっか。これ以上近づかない方がいいね。」
足を止めた少女は、少し考えると、その場にしゃがみ込んだ。
「じゃあ、ここにいるね」
「ここに?」
「うん。あなた達とここで一緒に待つ」
少女はそう言うと
「おいで」
小さな声で猫を呼ぶ。
「大丈夫だよ」
するとーー
猫の耳が、ぴくりと動いた。
私は目を瞬いた。
「……え?」
猫がこちらを見る。
正確には、私たちの隣にいる少女を見ている。
そして、ゆっくりと一歩。
もう一歩。
「来た……!」
リクが呟く。
猫は警戒するようにこちらを見ながら、それでも少しずつ近づいてくる。
私は思わず息を止めた。
さっきまで、あれだけ逃げていたのに…。
私達の前まで来ると、黒猫はそこで立ち止まった。
少女がそっと手を差し出す。
猫は逃げなかった。それどころか、その手に小さな頭をすり寄せる。
「すごい」
私は思わず呟いた。
少女が顔を上げる。
「え?」
「この子、あなたには逃げないのね」
「そうなの?」
少女は不思議そうに首を傾げた。
そして、猫の頭をそっと撫でる。
「怖くないよ」
黒猫は気持ちよさそうに目を細めた。
私はリクと顔を見合わせる。
「……どうして?」
「さあ?」
リクも首を傾けた。
そんな私たちを見て、少女はにこっと笑った。
「私、フィオナ。よろしくね!」
「私はリリアーナ。リアって呼んで」
「僕はリク」
自己紹介を軽く済ませると、三人の視線が同時に黒猫へ向かう。




