お守り
店先に並んでいたのは、木で作られた小さなお守りだった。
どれも手のひらに収まるほどの大きさで、表面には絵柄が彫られている。
「これは、何のお守りなの?」
「こちらは豊作を願うお守りですよ。麦の穂が彫られてます」
「じゃあ、こちらの鳥は?」
「これは旅の安全を願うお守りです。
他にも、絵柄によって様々なご利益がございます。
大樹は家内安全、魚は商売繁盛、炎は災避け、花は良縁です。
何か気になるお守りはございましたか」
露店の店主が、にこりと笑った。
「……これ」
その中に、ひとつだけ目を引くものがあった。
太陽にかかる雲が彫られたお守りだ。
私はそれを手に取った。
「太陽と雲ですか?」
アデルが隣から覗き込む。
「こちらにはどのような意味が?」
私は手にしたお守りを見せる。
店主はそれを見ると、穏やかに笑った。
「それは――『光が強すぎるとき、影が守ってくれる』という言い伝えがあるお守りです」
「光が強すぎるとき?」
「ええ。昔の人の言葉ですからね。詳しい意味は、私にもよく分かりません」
店主はそう言って肩をすくめた。
「変わった言い伝えね」
「そうでしょう?」
店主が笑う。
私はしばらく迷った。
別に、どうしても欲しいわけではない。
ただ――なぜか、このお守りから目を離せなかった。
「……これ、ください」
「ありがとうございます」
店主からお守りを受け取る。
紐を指に絡めて持ち上げると、木のお守りが小さく揺れた。
「お気に召したようですね」
アデルが微笑む。
「別に」
私は少しだけ視線を逸らした。
「……なんとなく、気になっただけよ」
そう言ってお守りを大切にポケットへしまった。




