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影守の令嬢は悪役令嬢と呼ばれる  作者: 高梨しいな
王立学園

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野外活動


青葉舎での生活にもすっかり慣れたフィオナは、今日もノアとエルナと並んで教室へ向かっていた。


「ねえ、今日の午後って何するんだっけ?」


ノアが尋ねる。


「先生が言ってたでしょ。今日は野外授業で植物や動物の勉強するって」


エルナが呆れたように答えた。


「ああ、そうだった!」


「忘れてたの?」


「いや、ちゃんと覚えてたよ。ただ、何をするのかなって」


そんな二人のやり取りを聞きながら、フィオナは笑った。


今日、第一学年の生徒たちは、王都の郊外にある森へ向かうことになっている。


自然に触れながら植物や動物について学び、クラスの親睦を深めるための授業だ。


「森なら、私に任せてよ」


エルナが得意げに胸を張った。


「牧場の近くにも森があるから、よく行くんだ」


「頼りにしてるよ、エルナ」


ノアが笑う。



昼過ぎ。


生徒たちは教師に引率され、学園を出発した。


王都の賑やかな街並みを抜けると、少しずつ建物が減っていった。


やがて見えてきたのは、緑に囲まれた小さな森だった。


「わあ……きれい」


フィオナは思わず声を漏らした。


木々の間から差し込む日の光が地面を照らし、鳥の鳴き声が聞こえてくる。


「気持ちいいね」


「でしょう?」


エルナが嬉しそうに笑う。


教師から簡単な説明を受けた後、生徒たちはいくつかの班に分かれた。


フィオナ、ノア、エルナで同じ班になった。


「じゃあ、植物を五種類見つけて名前を書いてください。野生動物がいたら刺激しないで観察しましょう」


教師から渡された紙を見て、ノアが頭を抱える。


「植物なんて分からないよ」


「私はある程度分かるよ」


エルナが即答した。


「じゃあ、エルナについていけばいいね」


「ノア、自分で探すんだよ」


「はいはい」


三人は森の中を歩き始めた。


しばらく進むと、エルナがしゃがみ込んだ。


「これ、薬草だよ」


「薬草?」


「うん。牧場で使うこともあるから、時々森に入って採るの」


フィオナも隣にしゃがみ、葉を覗き込んだ。


「植物って薬にもなるし、こんなに種類があるんだね」


「大きい森にはもっといっぱいあるよ」


エルナが答える。


三人は夢中になって植物を探した。


途中でノアが珍しい形の木の実を見つけたり、フィオナが小さな花を見つけたり。


いつの間にか、授業ということも忘れて楽しんでいた。


そのとき。


「……あれ?」


フィオナが足を止めた。


「どうしたの?」


エルナが振り返る。


「今、何か聞こえなかった?」


三人が耳を澄ます。


森の奥から、小さな音が聞こえた。


「……キュウ」


「動物?」


エルナがすぐに反応した。


三人は顔を見合わせる。


「行ってみよう」


フィオナが言った。


「先生に言ったほうがいいんじゃない?」


ノアが心配そうに言う。


「すぐそこだと思う。確認するだけだから」


三人は音のする方へ歩いていった。


木の陰を覗くと、そこには小さな子鹿がいた。


どうやら足をケガしているらしい。


「かわいそう……」


フィオナがしゃがみ込む。


「触らないほうがいいよ」


エルナが静かに言った。


「驚かせたら逃げちゃうから。母親は…近くにいないみたいね」


「お母さんと離れちゃったの?」


フィオナは少し離れた場所から子鹿を見つめた。


すると、子鹿がゆっくりと顔を上げる。


フィオナと目が合った。


「大丈夫だよ。すぐ治るから」


小さく声をかける。


その瞬間、胸の奥がほんの少し温かくなった。


「先生を呼んでくる!」


ノアが走り出した。


エルナは子鹿から目を離さず、静かにその場に残る。


しばらくして教師がやってきて、子鹿を保護することになった。


「よく見つけたな」


教師に褒められ、三人は顔を見合わせた。


「フィオナが最初に気づいたんですよ」


エルナが言う。


「そうそう。フィオナって、動物とか見つけるの得意そうだし」


ノアも笑った。


「そうかな?」


フィオナは首を傾げた。

そして、胸の奥に残る温かさが気になっていた。


森を出る頃には、空が少し赤く染まり始めていた。


「ねえ、フィオナ、エルナ」


ノアが声をかけた。


「なに?」


「また三人でどこか行こうよ」


「うん!みんなで遊びに行こう」


フィオナは笑顔で答えた。



今日、森で見つけた小さな命との出会いが、フィオナの中に眠る何かを、ほんの少しだけ目覚めさせた。

そのことをまだ誰も知らないーー。


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