↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影守の令嬢は悪役令嬢と呼ばれる  作者: 高梨しいな
もう一度あの日のように

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/51

秘密の場所で


約束の日。


フィオナは朝から落ち着かなかった。


いつもより少しだけ綺麗な服を着せてもらい、母に髪を整えてもらう。


「そんなに緊張しなくても大丈夫よ」


「だって、リア様に会うんだもの」


収穫祭で出会って以来、もう一度会いたいとずっと思っていた。


リリアーナは元気にしているだろうか。

ネロのケガは治っただろうか。


今日はきっと、二人でゆっくり話せる。


そう思うと、胸が弾んだ。




カフェ・ミモザに入り、店員に名前を告げる。


「フィオナ様ですね。お待ちしておりました。こちらへどうぞ」


案内されたのは、店の奥にある個室だった。


扉の前で、フィオナは小さく息を吸う。


少し緊張する。

けれど、リリアーナの顔を思い浮かべると自然と笑顔になった。


「失礼します」


扉を開ける。


「フィオナ!」


すぐに、聞き覚えのある声が飛び込んできた。


「リア様!」


フィオナの顔がぱっと明るくなる。


部屋の中には、銀色の髪をした少女が立っていた。

収穫祭の日と同じ、優しい笑顔。


「久しぶり!」


「はい!お久しぶりです!」


二人は嬉しそうに顔を見合わせる。

けれどーー。


フィオナは、ふと違和感に気づいた。


リリアーナの隣に、もう一人いる。

金色の髪に青い瞳。


その姿を見た瞬間、フィオナの笑顔が固まった。


「……え!?」


「久しぶり、フィオナ」


「セ、セドリック様!?」


思わず声が裏返った。

なぜ?どうしてここに?

フィオナは目を丸くした。


リリアーナからの手紙には、そんなことは一言も書かれていなかった。


「驚いた?」


リリアーナが楽しそうに尋ねる。


「驚きました! だって、リア様と二人で会うんだと思って……」


「ふふ。セドリック様にも来てもらったの」


リリアーナは嬉しそうに笑う。


「三人で会った方が楽しいでしょう?」


「それは……そうですけど……」


フィオナはちらりとセドリックを見る。


王太子殿下


そう思った途端、背筋が伸びた。

目の前にいるのは、この国の王太子なのだ。


「そんなに緊張しなくていいよ」


セドリックが苦笑する。


「今日もお忍びだし、楽に話してよ」


フィオナは改めて彼を見る。

シンプルなシャツに上着を合わせた、少し上品な少年の服装。

それでも、どこか育ちの良さは隠せない。


「……はい」


「それに、今日は三人で会えるの を、楽しみにしていたんだよ」


その言葉に、フィオナの肩から少し力が抜け、ようやく笑えた。



テーブルの上にはメニューが並べられていた。


「何を飲む?」


セドリックが尋ねる。


「私は紅茶にするわ」


リリアーナが答える。


「僕も紅茶にしようかな」


「じゃあ、私は……」


フィオナはメニューを覗き込む。


「この果物の飲み物にします」


三人で飲み物とケーキを選ぶ。


注文を終えると、リリアーナが嬉しそうに二人を見回した。


「こうして三人でいると、収穫祭の日を思い出すわね」


「そうだね」


セドリックも頷く。


「でも、今日はネロはいないけど」


「ネロは元気ですか?」


フィオナが尋ねると、リリアーナの顔がぱっと輝いた。


「もちろん!もうすっかり元気よ」


そこからは、ネロの話が止まらなかった。


「最近はね、朝になると私の部屋に来るの。窓辺が好きみたいで――」


「へえ」


「それから、お庭を走り回ったり、アデルの仕事を邪魔したりするのよ」


「ふふっ」


フィオナが笑う。


「すっかりリア様の家の猫ですね」


「そうなの!私に一番懐いているわ」


リリアーナは嬉しそうに笑っている。


やがて話題はセドリックへ移った。


「セドリック様は、王宮では何をしているんですか?」


「僕?」


「はい」


「毎日、勉強だよ」


「勉強?」


「歴史や政治、外国語。それから礼儀作法や剣の稽古もある」


セドリックは苦笑する。


「朝から予定がいっぱいで、自由な時間はあまりないんだ」


「大変ですね……」


「でも、剣の稽古は好きだよ」


「じゃあ、遊ぶ時間は?」


「ほとんどないかな」


「ええっ?」


フィオナが目を丸くする。

セドリックは楽しそうに笑った。


「王太子だからって、毎日好きなことをしているわけじゃないんだよ」


「そうなんですね」



そこへ、注文したケーキが運ばれてきた。


三人がそれぞれの皿を眺めていると、リリアーナがフィオナのケーキを見て首を傾げる。


「フィオナ、そのケーキ好きなの?」


「うん。私の家でも、似たようなお菓子を作っているの」


「え!?フィオナのお家って、何をしているの?」


「商業区で焼き菓子のお店をやっています」


「焼き菓子……?」


リリアーナはしばらく考えてーー突然、目を輝かせた。


「あっ!もしかして、収穫祭で焼き菓子の屋台出してた?」


「はい!私の家のお店です」


「本当!?」


リリアーナが驚く。


「じゃあ、あのお菓子を作ったのは、フィオナのお母様?」


「そうです。毎朝焼いてます」


「すごいわ!あの焼き菓子、とても美味しかったのよ」


「ありがとうございます!お母さんが喜びます」


フィオナは照れながら笑った。

気がつけば、身分への緊張はすっかり消えていた。



あの日黒猫を助けた三人の子ども。

そんな時間が、そこにはあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。