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影守の令嬢は悪役令嬢と呼ばれる  作者: 高梨しいな
もう一度あの日のように

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16/51

三人で会う場所


王宮から帰った日の夜。


リリアーナは自分の部屋で、ネロを膝に乗せていた。


「ねえ、ネロ」


「にゃあ」


「今日ね、セドリック様に会ったのよ」


ネロがぱちりと目を開く。


「最初は少し緊張したけど、だんだん収穫祭のときみたいに話せるようになったの」


リリアーナはネロの頭を撫でながら、今日の出来事を思い返す。


そして、ふと思い出した。


「そうだ。フィオナにも会いたいって、セドリック様も言っていたわ」


「にゃ?」


「だからね、三人で会える場所を考えたの」


ネロは興味がなさそうに尻尾を揺らす。


「ちゃんと聞いてる?」


「……にゃ」


「もう」


リリアーナは笑った。




ー翌日ー



リリアーナは父の執務室を訪れた。


「お父様、お願いがあるの」


「なんだい?」


父が書類から顔を上げる。


「収穫祭で仲良くなったフィオナに、もう一度会いたいの。

できればセドリック様と三人で会いたいの」


「なるほどな」


父は少し考えたあと、娘に笑いかけた。


「ただし、場所と時間はきちんと決めること。

王太子殿下もいらっしゃるのだからな」


「もちろんよ」


「それで、場所は決めているのか?

三人でゆっくり話したいのなら、公爵邸の庭を使っても構わないぞ」


「もう場所は決めてあるわ!

昔、お父様と行ったカフェにしようと思うの」


父の手が止まった。


「……あの店か?」


「うん!昔、お父様が連れて行ってくれたでしょう?」


「覚えていたのか」


父の顔に、嬉しそうな笑みが浮かんだ。


そこは、まだ幼かったリリアーナを一度だけ連れて行った店。「カフェ・ミモザ」だった。


アシュフォード家が創業時から支援している店で、当時のリリアーナはそこで食べたケーキを嬉しそうに頬張っていた。


父にとっては、何気ない思い出だった。

けれど娘が覚えていてくれたことが、何より嬉しい。


「もちろんよ。お父様と一緒に行ったもの」


「……そうか」


父は目を細めた。


「それなら、あの店がいいかもしれないな。創業時から支援しているから融通も利くし、確か奥に個室もあったはずだ」


「じゃあ、そこで決まりね!」


「ああ」


嬉しそうに笑う娘を見ながら、父はふと思う。


いつの間にか、自分で会いたい人や行きたい場所を決められるほど大きくなったのだ。


「……リア」


「なあに?」


「父さんと行った店を覚えていてくれて、ありがとう」


「どうしてお父様がお礼を言うの?」


「父さんが嬉しかったからだよ」


「変なの」


リリアーナは笑った。


「では、王宮やカフェ、平民の子の家には私から話を通しておこう」


「ありがとう、お父様!」


父は頷いた。


王太子であるセドリックが外出する以上、当然、王宮側の護衛も同行するだろう。

今回はお忍びということになっても、それは変わらない。


だが、王家の護衛がいるとはいえ、こちらはこちらで護衛を付けておこう。

店の周囲に目立たぬよう配置しておけば、リアたちの邪魔にもならない。


そう考えた父は、何も知らない娘に穏やかな笑みを向けた。



こうして、公爵家から王宮へ日程の確認が取られることになった。


フィオナの家にも使者が向かう。

用件は、先日の収穫祭でリリアーナがお世話になったお礼と、商業区のカフェで再び会う機会を設けたいというもの。



その日を楽しみにしながら、リリアーナはネロの背中を撫でた。


「フィオナ、喜んでくれるかな?」


「にゃあ」


「ふふ。ネロも会いたい?」


ネロの尻尾が、ぱたんと揺れた。


「じゃあ、今度は一緒に会いましょうね」


リリアーナは、嬉しそうに笑った。


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