第7話:うちのパーティ、強すぎて気まずい
その後、街道沿いの村々を巡る魔族討伐の旅は、驚くほど順調……というか、異常なスピードで進んでいった。
覚醒を果たした勇者・勇斗くんは、聖なる光を身に纏いながら、文字通り破竹の勢いで魔族をなぎ倒していく。
そしてドワーフのガルフさんも、巨体を活かして巨大な斧をブンブンと振り回し、豪快に魔族の群れを吹き飛ばしていた。
——だが、その二人をはるかに上回る圧倒的な殺伐感で魔族を全滅させていく男が一人。
「『影喰らい(シャドウ・イーター)』」
エリオス様が杖を一振りすると、地表から無数の黒い影が伸び、魔族たちを叫ぶ暇すら与えず一瞬で飲み込んで消し去ってしまう。
その表情は冷酷そのもので、もはや魔王討伐というより**「イライラ解消の作業」**をしているようにしか見えない。
おかげで聖女である私の出番といえば、激闘(一方的な殲滅戦)が終わったあとに、みんなの服についた汚れを落としたり、擦り傷程度を光魔法でちょちょっと癒したりするくらいだ。
(……いや、うちのパーティ強すぎでしょ!? なのに、なんでこんなに胃が痛くなるほどギスギスした雰囲気なのーーーー!??)
平和な現代日本から来たしがない元OL(30歳)の私は、戦闘の恐怖とは全く別のベクトルで、気まずさに胃を押さえて悶絶していた。
「ガッハッハ! 若いのぉ、若い! 恋の火花で魔族が寄り付かんで一石二鳥じゃな!」
私の横で、干し肉をかじりながら呑気に笑うドワーフのガルフさん。
お願いだからその豪快な笑い声でこの痛々しい空気を和らげてほしい。切実に。
なにせ、戦闘が終わるたびに必ず「あの不毛なやり取り」が繰り広げられるのだから。
「リリアさん! 見ましたか!? 僕、一瞬で3体同時に倒しましたよ!」
剣の血をサッと払い、犬が尻尾を振るような勢いで目を輝かせて駆け寄ってくる勇斗くん。
「すごいでしょ!」「褒めて!」と言わんばかりのドヤ顔で、私との距離をグッと詰めてくる。
(うっ……! まん丸い目でこっちを見てくる感じ、完全に実家で飼ってた柴犬と同じ……! 可愛いけど、ダメ! 勇斗くん後ろ!!)
「——その程度で浮かれるな。未熟者」
「ッ!?」
案の定、勇斗くんが私に触れる直前、氷点下の冷気を纏ったエリオス様が割り込んできた。
前髪の隙間から覗く黒い瞳で射殺さんばかりに勇斗くんを睨みつけると、ごく自然な動作で私の腰を抱き寄せ、これみよがしに距離を離す。
「あと……何度も言わせるな。リリアに無闇に近づくな」
「くっ……! 僕はただ、リリアさんに無事を取り報告しようとしただけで……っ!」
「報告なら遠くから声だけで十分だ」
バチバチバチッ!! と目と目の間で物理的な火花が散りそうなほどの牽制合い。
勇斗くんは悔しそうに拳を握り締め、エリオス様は冷酷な笑みを浮かべながら、抱き寄せた私への腕の力を少し強める。
(エリオス様ーーー! 張り合わないで! そして勇斗くんも煽りに乗らないで! 今は魔王を倒すための旅なんだからーーー!?)
頼もしすぎる男たちに挟まれながら、私は「この調子で魔王城まで保つのだろうか……」と、青空を見上げて深々と溜め息を吐くのだった。




