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第10話:凱旋パレードと、加速する噂


魔王城でのあっけなさすぎる和解から数日。

不戦条約という最高のかたちで平和をもたらした私たちは、王都に戻るや否や「世界を救った英雄」として大フィーバーの渦中にいた。

街中が祝福モードに包まれる中、特に盛り上がっていたのが「聖女と勇者の運命の恋」というお決まりのウワサだ。

「っ~~~!? ち、違いますよ! 僕とリリアさんはまだそんな……っ! いや、僕はその……っ!」

国民からの「お似合いのカップルだ!」という声援に、勇斗くんは顔をリンゴのように真っ赤にして、両手をぶんぶんと振りながらアワアワと照れまくっている。

(あ〜……勇斗くん、私に恋してくれてるのはすごく伝わってくるんだけどね……)

彼が私に寄せてくれているまっすぐな気持ちを自覚しているからこそ、この状況は実に気まずい。

「ふん、未熟者が。だいたいリリアが貴様ごときを選ぶわけがないだろう」

「なっ……! いくらなんでもその言い方はないだろ! 僕はまだお前のことを、リリアさんの相手として認めたわけじゃないからな!」

不機嫌そうに鼻で笑うエリオス様に、勇斗くんが必死に対抗してバチバチと火花を散らす。

そのふたりの間で、私は冷や汗を流しながら苦笑いするしかなかった。

(勇斗くんの気持ちもありがたいんだけど、このままだと噂が一人歩きして『勇者と聖女のカップル』として既成事実を作られちゃうよ!)

それに何より、勇斗くんの片思いに応えられない以上、このまま期待を持たせたり変な噂を広め続けたりするのも申し訳ない。

(これはもう、国民の皆さんにもはっきりとアピールするしかない。私の恋人はエリオス様なんだってことを!)

そう決意した私は、街中を練り歩く凱旋パレードで、エリオス様とペアで腕を組んで歩き、恋人アピールをする作戦を立てたのだった。

そして迎えた、凱旋パレード当日。

豪華な馬車に乗り込む直前、どこか暗い顔をしたエリオス様が私を見下ろしていた。


「……リリア。別に、俺が恋人だとそこまで周囲に主張しなくてもいい」

「えっ?」

「事実は俺たちが分かっていればそれでいい。俺は気にしていない……それに、闇魔法使いの俺と聖女のお前では、周囲からの見映えも悪い。お前の立場を悪くしたくはない」

珍しく気弱で自分を卑下するようなことを言い出すエリオス様。

(……もう、そんな顔しちゃってさぁ!)

私はわざとらしく「んもぅっ!」と声を上げると、プクッと頬を膨らませてエリオス様を見上げた。

「違います! 私がエリオス様が恋人だって、みんなに自慢したいんです!」

(……よしっ! 我ながら完璧なあざとさ! これ、若くて傾国の美少女なヒロインの見た目じゃなきゃ一発で引かれるやつだなー)

内心でそんな元OLらしい客観的なセルフツッコミをしていた私だったが、効果は劇的だった。

エリオス様は一瞬、ハッと目を見開いたかと思うと——次の瞬間、その美しい唇を歪め、色気たっぷりのニヤリとした笑みを浮かべた。

「……っふ、そうか。そうだな。ならば言葉通り、国中の有象無象に『聖女は俺の女だ』と見せつけてやろう」

グッと強引に腰を抱き寄せられ、耳元で低い声で囁かれる。

破壊力バツグンのドSフェロモンに、私の心臓は一瞬で爆発しそうになった。

(エリオス様、スイッチが入ったときの威力がすごすぎる……!)

「おい!お前!リリアさんに何くっついてるんだ!? 離れろ!」

後ろで焦りまくる勇斗くんの悲鳴と、狂喜乱舞する国民の大きな歓声を浴びながら、私たちは堂々と腕を組んで凱旋パレードへと繰り出したのだった。

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