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結末が残酷な死に方なので棚ぼた玉座は遠慮します!なのに、最大の敵が溺愛してくるんです!  作者: 幻燈 カガリ


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✣ 幕間 カーディアス・リタ・ルベストリア 2






机を埋め尽くす書類の山を背にし、ある塔へと視線を送る。


妹である、エスティアがこの王宮から姿を消して、もう数日が経過した。


それなのに……俺は何の手掛かりも得られぬまま、自分の宮に引き篭もり、執務を続けているだけ。


「……どこに。どこに行ったんだ、……エスティア」



指を折り込み、強く握る。

小刻み震える拳に血管が浮き上がった。


不甲斐ない自分に腹が立つ。


───ドンッ。


思わず、窓台へと握り拳を叩き付けた。


「クソッ……」


唇を強く噛む。

打ちのめされるとはまさにこの事を差すのだろう。


顔を顰め、俯いた。



「いやぁぁあ。────すみません、すみません。描き直しますから!」


絶命のような悲鳴が耳を劈く

絵筆を持ちながら、平謝りする画家ヘイゲルを横目で見る。エスティアの姿に納得出来ず、何度も描き直させたせいか、ヘイゲルは俺が何かする度にビクビクと肩を震わせるようになった。



「……すまない。作業を続けてくれ」


「は、はい……」


チラチラと俺の顔色を伺うヘイゲルを無視し、積まれた紙の山から一枚手に取り、ザッと目を通す。


通したところで、頭には何も入らない。



「……お前が居なくなったら、俺がこの座に着いた意味がない」


騎士団も自由に動かせない自分が出来ることは限られていた。唯一出来たことといえば、王都中にエスティアの姿絵を貼らせたこと。王宮からも出られない自分の代わりに、セリオスを遣わせたが帰城したとの一報はまだ耳に入っては来ない。


ドタドタと廊下を音を立て走る音がこちらへと近づいて来る。

ドォーンと勢い良く開いた扉から、飛び出すひとりの男。



「────で、殿下ッ!王太子殿下!」



俺を呼ぶ声のする方へと顔をやる。


「……どうした?騒々しい」


覇気のない声が出た。眉が少しつり上がる。


セリオスの代理、第二騎士団所属のライナーが血相を変え、扉を開け放ったまま汗も拭かず、書類越しに立たった。軽く頭を下げた後、すぐさま口が開ける。


「殿下ッ!都中に出した貼り紙の効果が出ましたよ!」



────コ、コン。



空いたままの扉を指で叩く音が室に響き渡った。


視線をそちらへと向ける。


まさかの人物に思わず、目を丸くした。



「……アーノルド、兄上」



産気づいた母の知らせを聞いた妃が、私欲の為に無理矢理、産み落とした。


俺より、数分先にこの世に誕生しただけで、第一王子とされた男。



久々に見た兄は、やはりどこか相容れない。



「……我が弟は、失せ物があってもエラい悠長にしているな」


室に入るつもりはないと、腕を組み背中を扉に預け、言葉を投げてきた。


片眉を上げ、余裕そうに見えるが腕を掴む指は白く、叩く指先は激しく忙しない。



「兄上がここにお出でになるとは、思いもしませんでした」



突然の来訪者を見据えた。

一瞬だけ、視線が衝突したがアーノルドは目を伏せた。



「……やっぱり、あの貼り紙はお前の仕業か」



バカにしたような薄笑いを浮かべ、息を吐くようにそう言葉を紡いだ。



「本題をお教え頂けますか?兄上」



談笑をしに来たわけではないだろう。

俺たちはそんな仲ではない。


視線の端でそそくさと帰り支度を始めるヘイゲルを見とめるが、今はそんなことどうでも良い。



「……フッ、その瞳。血の繋がりを感じさせるな」


「何が言いたい、のですか?」


眉根に皺が寄り、無意識に語気も次第に強くなる。



「そう睨むな。それより、


────狂犬イヌをしっかり見張っておけ」



………イヌ?


唐突な単語に、眉が歪んだ。



鋭い眼光が俺を捉える。


そんな感情のある瞳を俺に見せたことなど今までにあっただろうか。

俺が王太子の座を得ても、兄上は興味など微塵も無いかのように素知らぬ顔をしていた。


背中が扉から離れた。


スクッと背筋を伸ばし、それだけ言い捨てると兄上は俺に背中を見せた。一度も振り返らず、乾いた靴音だけが、遠ざかって行った。



「……で、殿下、カーディアス殿下」



名を呼ばれて我に戻る。扉の向こうから、こちらへと視線を戻す。


「ああ、すまない」


「大丈夫ですか?」


「問題はない。それよ────」



────ガシャン。



書面に広がる漆黒のインク。

みるみるうちに染め上げていく。


頭に反芻する兄上の言葉。



心臓が跳ねた。



「ライナー、馬の準備をしてくれ」


「……え?馬、ですか?」


「ああ、駿馬を頼む」



ドン!

ドサーッ……


焦りで足が机に当たった。

目の前の紙の山が床へと雪崩込む。

宙へと舞い上がる白い紙。



「ど、どうしましょう?!書類がッ」



顔面を蒼白にするライナーの脇を足速に通り過ぎる。

床に散らばった紙を容赦無く踏み付ける。


「あぁ!大切な決算書!」


背後で頭を抱えながら、悲痛な叫び声がするが今の俺の耳には届かない。気が付けば俺の足は走り出していた。



「───あっ、待ってください!で、殿下!」



ライナーの声が背後から飛ぶ。

それでも、俺は足を止めずに前へと急いだ。













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