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結末が残酷な死に方なので棚ぼた玉座は遠慮します!なのに、最大の敵が溺愛してくるんです!  作者: 幻燈 カガリ


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✣ 12話 淑女はお金よりも自由を求めますの






「嬢ちゃん、コレよぉ。オジさんが本当に買い取ってもいいの?」


 頭の輝きがステキなおじ様がモノクル越しに、私へと目を向けた。


 片手にはジュエリールーペ。

 もう片方には、


 ─────呪物の宝石。



 手袋越しで触っているけど、

 呪われたごめんなさいね。


 そんな事を考えながら、呪物を眺める私。


 今、ナキ…じゃない。

 ナイジェルのお知り合いの宝石商の方に鑑定を依頼しておりますの。


 あの日から、ナイジェルは私の舎弟と相成りまして。

 顎先で使役しておる次第です。



 この下僕、あ、ナイジェルです。が大通りから外れ、

 暗がりの路地に入るもんですからね。


 ……下克上?


 ────急所蹴り上げ案件?



 背後から的確に仕留めようと《《アソコ》》に狙いを定め、つま先を振り上げようとした、その瞬間。


 ナイジェルの足が止まりました。

(チッ、無事で良かったな!)


 こちら宝石の輝きに負けない頭のオッドーおじ様のお店でしたの。



 ん?視線を感じる。



 そちらへと顔を向けた。


 へ?

 私が見た途端に顔を逸らすなんて……

 無礼じゃない!この下僕っ!



 耳先が赤くなるのが、

 ちょっと、……よく分からないんですがね。




 あっ、失礼。

 オッドーおじ様にお返事をしなければ!



「ええ、売りますわ。私にそんなモノ必要ないですもの」



 テーブルに出された上等なティーカップのハンドルを三つの指先で掴み上げた。ソーサーも添えながら。


 なんか、私……優雅に見えちゃってる?




「うわぁ、太っ腹だねぇ。少しキズがあるが、こんだけの大きい石なら問題ナシだ。んじゃ、この価格で良いかい?」



 サラサラと紙にペンを走らせ、スっと私の前に紙を差し出した。

 少し顔を傾け、目を細める。手にしていたティーカップをソーサーを置く。



 ん──実際、幾らでも良いのよね。

 ノルドのところで全て厄介になってるし……

 衣食住とお昼寝デザート付きっ!!

 早く、───この呪物を手放したい!

 よしっ、良いわ!ここで───



「おい。オッドー、それは安すぎやしないか!」



 顔を逸らしていたナイジェルがテーブルに身を乗り出し、口を挟んできた。



 は!なにしてんの?!この下僕っ!

 私、コレで納得してたのに───!


「はぁ、手厳しいな……」


 大きく息を吐き、肩を落とすオッドー。

 差し出した紙を引き寄せると、提示した価格に二重線を入れ、更に500も上乗せしてくれた。


 え、なんか申し訳ないのだが。


「これ以上は無理だ。こっちも商売だからな」


 明らかに声が低くくなったオッドー。隣で椅子が音を立てる。


 は!また、何口出すつもりよ!!


 私はナイジェルの足をゴツンっと一発入れた。


「ガハッ」


 椅子が倒れ、そのまま蹲るナイジェル。



 それを横目で確認すると、前で口端をピクつかせているオッドーへと顔を向け満面の笑みを浮かべながら、お淑やかに口にした。



「こちらで、結構ですわ。サインはどちらに?」






 ✣✣✣✣





 チリンチリン。


 店を出た。


「嬢ちゃん、またよろしくなぁ」


 とオッドーの声が響く。

 私の腕はたっぷりのお金が詰まった布袋をしっかりと抱えていた。


「これだけのお金があれば、仕事しなくてもいいんじゃないかしら?」



 足先をヴェルデ商団へと向け歩き出す。その後ろを数歩遅れながらナイジェルが付いてくる。


 私が蹴った足を引き摺りながら。


「ったく……私が口を出しから値が上がったというのに。しかも、まだ……」



 口を尖らせブツブツ言ってます。



 そんなの今の私はどうでも良いのよ。

 はあ、なんか肩が軽くなった気がするわ。


 このまま踊り出したいキ・ブ・ン!



「ねぇ?あれ……」


「そうじゃない?」


「でも、なんか────違うわよね?」



 ん?行き交う人が私の顔ジロジロ見てるような。

 気にしすぎ?



 まじまじと見て、私と目が合うと、

 ササッと顔を逸らしたり、天を仰いだりと忙しない。


 中には手で顔を覆う強者まで現れた。



 うん。地味に傷付くのだが。



「げ……あ、ナイジェル。私の顔に何か付いているかしら?」


 足を止め、後ろを振り返る。

 ひらっとスカートが舞い上がった。


 ギクッとナイジェルが肩を震わせ、目を横へと動かす。無意識なのか、腕を軽く上げ距離を取られた。


「え。なに?もう、蹴らないわ」


「あ、へ、あっ、そんなことじゃない!」



 じゃあ、何よ?


 片眉を吊り上げ、ナイジェルを見上げた。



「お前の顔には何も───付いてないしっ!……それと」



 更に腕が上がる。



 ん?なんか頬赤くない?

 風邪かしら?



「ナイジェル?もしかして、体調悪いのではなくて?」


「はっ、た、確かに具合が悪い────お、ま



 ───カタカタパカッ。

 牧草の香りが鼻へと通る。


 脇で馬車が停まった。

 窓が開き、そこから眼鏡が。

 じゃなくて、眼鏡を掛けた彼が飛び出した。


「あ、ティア嬢。ご用事は終わりましたか?」


「ダミアンさま?そちらも商談がまとまりまして?」


「はい!これもティア嬢のお陰です。あ、お帰りにらなるなら、一緒にどうです?」



 その誘いに私は即答した。



「そのお申し出で、快くお受け致しますわ」



 腕が小刻みに震えていた。



 ああ、もう、この腕最弱すぎっ!!



 馬車の扉が開き、ダミアンが手を差し伸べる。

 私はその手に己の手を重ねた。


「という事だから、ナイジェルはこのまま歩いて帰ってください」


「あ?───私も乗せろっ!ダミアン!」


「ダミアンさま、ナイジェルは風邪を……」


「いや、ただの知恵熱ですから、お気にならさず。じゃあ、また後で」


「おい!待って────」


「定員オーバーです」


 にこやかに言葉を返すと、無情にも扉は閉められた。

 御者が手首を振り、馬が脚を動す。


 その後ろでナイジェルの声が悲しく反響した。



「それ、四人乗りだろうが────ッ!!」





 ✣✣✣✣





「おかえり!ティア」


 馬車から降りると、商団員のひとり……グレニトが声を掛けてきた。色黒でいかにも女好きに見えるが、心が乙女すぎる純粋ピュア男子。


「ティアお嬢、お帰り」


 続けて、ザ・見た目傭兵。筋肉モリオこと、ビアンキ。その筋肉は戦うモノではなく、魅せるモノらしい。


「ただいま戻りました」


 荷台へと荷物を積むふたりに頭を下げた。

 ビアンキが眉を顰め、私の顔をまじまじ眺めてくる。指先で顎を掻きながら気になる事を言い出した。



「やっぱり、よお。アレ、ティアお嬢じゃねぇか?」


 ビアンキはグレニトの方へ首をだらりと垂らした。


「ビアンキ兄もそう思う?」


 グレニトの手が止まり、私の方へと視線が集まる。


 え?何事よ!!


 荷物をポーンと荷台へと上手い具合に載せたビアンキは私の後方へと目を向けた。


「だってよぉ、似てるじゃねぇか。お前も、そう思うだろ?」


 白檀の香りがふわっと香った。


 ガシッと頭を掴まれ、容赦なくその手は激しく掻き乱した。

 視界に長い髪が掛かる。


 こんなことをする奴は……アイツしか居ねぇ。


 髪の隙間から覗く目が鋭く光るのを見たグレニトが、小さく悲鳴を上げた。


 私は勢い良く振り返ると、豪華な靴目掛けてヒールを叩き付ける。



「おっと、危ないな」


 ひょっと、軽やかな足捌きで私の攻撃を避けたのは蒼玉の男。ノルド。


 来たな!私の宿敵っ!!


 ギロッと射殺す瞳を遠慮なく睨めつけた。


「都中に貼り巡らせてある張り紙か?」


「それよ。上品なお姫様って感じんでぇ、スプーンすら持てそうもない儚げな乙女」


「そうなんですよ、ノルドさん。あの絵姿が、ティアに似てるというか……」



 へ?何それ?

 私知らないンだけど……。



 ひとりだけ疎外感を感じるのだが。



「フンッ、お前ら……あの絵とこのジャジャ馬が同一人物だと思うか?」



 静まり返った空気。

 馬の呼吸音がやけに大きく聞こます。



 オイっ!!

 誰か否定しろっ!



「確かにノルドの言う通りだなぁ」


「納得ッ!さすが、ノルドさん」



 納得すんなっ!!首を縦に振るなっ!!

 笑うなっっっ!!


 みんな、私が馬に見えてるの?!


 ヒヒーンっ!


 あ、もう……イヤダ。



 私はパカパカとその場を後にした。





 ✣✣✣✣






「……閣下」



 窓の外から視線を中へと戻す。

 無言で跪いた男を見下ろし、口が開くのを待つ。


「こちらを売った者が現れました」


 スっと両手の平に乗せられた見覚えのある宝玉。


 つい、口元が緩むのを感じた。


「……その者は?」


「はっ、丁重にこちらへと連れて参りました」



 ───チャリ。


 机に掛けて置いた剣を手に取った。

 漆黒のぺリースを翻す。


「良い仕事をしましたね。ジェラート」


「ハッ」



ああ、こんな傍に……居られたんです、ね

 もう少しの辛抱、ですよ

 今、迎えに上がります



 ─────僕の王女さま。





キィ───


ガチャ。


扉が閉じられた。




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