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伯爵令嬢アメリア・レリクアは全力で何もしたくない〜前世で超多忙ワーママだったので今世では何もしたくありません〜  作者: 雨の日


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8/9

割れ鍋に綴じ蓋


「アメリア嬢が尊い…」

「はぁ?何…言ってるん、だい!」

アルフレッドと剣の打ち合いをしていたアーサーは、いとこが顔を赤らめながら呟くのに軽い寒気を感じながら渾身の一撃を食らわす。

明らかに心ここにあらずといった様子の癖に、隙を突く様なアーサーの打撃も軽く躱すアルフレッドへの苛立ちもあり、つい語気が強くなる。


「麗しのレディ・アメリアは、ついぞ公の社交界へは姿を現さなかったじゃないか。話題に上がっているうちに交流を広げ、販路を広げるのが社交界の基本だろう?商才がある、との前評判はどうやら我々の買い被りだったと最近では言われているが?」


そんな婚約者への悪態ともとれるアーサーの発言にも、アルフレッドは気を悪くする様子をみせず「少し休憩しようか」などと言いながら、アーサーへ水を渡す。



配属された新人騎士を自分の剣の鍛錬相手にしたい、とアーサーが言ったのはつい1週間ほど前だった。

聞けば、今まで相手をしてきた王宮騎士団の騎士は誰も彼も王太子に怪我をさせてはいけない、やら、王太子を打ち負かせて機嫌を損ねたら大変だ、やらで腰が引けているとアーサーは主張する。

そこで最近配属された新人騎士に目をつけた。

その新人騎士とはもちろんアルフレッドである。

いとこ同士、幼い頃は遊び半分本気半分で打ち合っていたのだ。遠慮のいらない間柄といえば、その通りである。


そうして異例の抜擢により、新人騎士アルフレッドは王太子の剣の鍛錬相手に選ばれたのだ。


幼い頃は同等の力量であったのに、とアーサーは思った。

自身が王太子としての勉学に明け暮れている間、この筋肉バカは鍛錬に励んでいたらしい。

それなりに筋が良いと自負していたテクニックはことごとく躱され、戦場であれば何回か死んでいたであろう一撃も幾度も食らわされた。


「すまない、言い過ぎた。僕は君の婚約者殿と面識もないのに…」

手加減されるのが嫌だから、遠慮なく相手してくるアルフレッドを選んだくせに、負け続けたからと機嫌を悪くしている。

アルフレッドに渡された水を受け取りながら、未熟な自分の暴言をアーサーは謝罪した。


「別に構わないさ。アメリア嬢は社交界での自身の評価を気にしていない。自分の好きな事をしてのんびり過ごす事に真の価値を見出している女性だからな」

そう言ってアルフレッドは何かを思い出した様にフフッと含み笑いをする。



つい先日の事だ。

怠け者と自称する彼の婚約者が、最近世間での流行を生み出している張本人だと知った。

初めて貰ったミサンガは、騎士団の平民出身メンバーが時々身につけていたので存在は知っていたが、ほかの2つは貴族階級でも話題であったのに自身は知らずに…開発者である婚約者本人にプレゼントするという失態を犯した。

彼女は笑って流していたが、これが普通の令嬢であれば気を悪くしていたに違いない。「婚約者の事なのになにも興味がないのですね」とか言われて。



以前のアルフレッドは自分で言うのもなんだが、婚約者として優良株であったと思う。故に、何度か婚約の打診と顔合わせを行った。

父である公爵は、アルフレッドの公爵家当主としての能力の低さを支えられる聡明な令嬢を選んでくれていたが、彼女達も年頃の女性だ。恋に憧れがあった。

もちろんアルフレッドも婚約者となった女性には、相手を尊重し、親愛を持って接するつもりであったのだ。それが恋愛感情へ移行することもあるだろうと。


一度顔合わせして、何度か交流を深め、そして互いに気が合いそうなら婚約へ…などと両家の両親や周りは考えていたのだろう。

1度目の顔合わせでは、令嬢たちは好印象であった。ニコニコとアルフレッドに話を合わせて相槌をうつ。2度目、3度目…と面会するにつれ、令嬢達は笑顔を消し、ため息をつく。

アルフレッドは何が悪いのか分からなかった。きっと、自分の頭の悪さが会話から透けて見え、聡明なご令嬢方が呆れているのだと、そう結論づけた。


実際の所は、恋に憧れる令嬢達が王子様然としたアルフレッドに過剰に期待し、紳士の対応を待ち焦がれていたのだ。

しかし脳筋アルフレッドは手紙やプレゼントで相手と心理的距離を詰めるという発想がなく、面会の合間に手紙を送ったり、面会時に「この前話していた好きなお花の花束です」などのサプライズもなく、蛋白に対応していた。

アルフレッドは真摯に対応しているつもりだが、相手には物足りない…私に興味がないのね、となり婚約が流れていたというのが事実である。



「アメリア嬢は、婚約者である私が半年も連絡を疎かにしていても“鍛錬に励んでらしたのね”とニコニコしているんだ」

「お?なんだノロケか?」

受け取った水を飲みながらアーサーは答える。先ほどのお詫びに惚気話も受け入れようとする自分は寛大だな、と思いながら。


「半年以上も連絡をせず顔も合わせなかった謝罪をしたが、お互いしたいことをして元気に過ごしているのだから問題ないと言ってくれた」

「怒っていなかったのか?寛大な女性だな」

「考えてみれば、この前アーサーに言われてプレゼントを持っていったが、プレゼントというものを渡すの自体がはじめてだったんだ」

「……え?1年間婚約して、初めて…?」

「あぁ、手土産の菓子などはあったが、形に残るもの…花束も…今までしてなかったと気づいた」

「お前…、ヤバいな」

それで怒ってないのは、一周回って呆れているのでは…?とは、口に出さなかった。


「そしたらアメリア嬢も、『私もミサンガくらいしかプレゼント渡していないのですし、おあいこですわ』と。」

「えっ、ご令嬢からもなかったのか!」

それ、相手はアルフレッドに無関心…とは言えなかった。アーサーは空気の読める王子様なのだ。


「今までの距離感で問題ないと。無理をすれば破綻するのが結婚生活だと」

「リアリストだな」

「私たちは気が合うなぁ、と。きっと結婚生活も上手くいくに違いない」

得難い女性だ…、尊い…とアルフレッドは天を仰ぎ神に感謝する勢いであった。


お互い無関心ではないが、干渉もしない…と言うことか?


なるほど、お似合いな2人なんだな、とアーサーは思った。

貴族社会に馴染めそうにないという意味で。





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