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伯爵令嬢アメリア・レリクアは全力で何もしたくない〜前世で超多忙ワーママだったので今世では何もしたくありません〜  作者: 雨の日


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7/9

久しぶりに婚約者らしく交流しましょう

アメリアがお昼寝を堪能し、ポカポカな窓際で現在のマイブームである読書をしている時だった。


「お嬢様、アルフレッド様がお越しですが…」

と侍女が声をかけてきた。

「アルフレッド様が…?先触れはあったのかしら?」

「いえ、突然の訪問をお許しくださいとの事で…」

「そうなの?分かったわ。準備するから応接室へ案内しておいてね」


そう言って髪を整え鏡で顔をチェックする。

先ほどまで昼寝をしていたので、ヨダレが付いていないか確認した。


そうして応接室への扉を開けると、緊張した面持ちのアルフレッドがソファから立ち上がった。


「アメリア嬢、突然の訪問で申し訳ない!」

ビシッと音がしそうな角度でお辞儀をするアルフレッド。

半年以上…いや、1年近く顔を合わせていないうちに、アルフレッドは騎士団で鍛えられ見違える様に体格が良くなっていた。

バランス良い筋肉に、騎士団のカッチリとした制服がマッチしており…


(とても、良いわ!!)


アメリアの脳内で大興奮である。

元々、タイプであった見た目がレベルアップしているのだ。


「アルフレッド様、お久しぶりです。立派な騎士様ですのね。その制服はもしかして…王宮騎士団のものでは…?」

「はい!本日から王宮騎士団へ異動となりました。」

「まぁ!すごいですわ!」


アメリアは思わず声を上げた。

王宮騎士団とは、名前の通り王宮で勤務する騎士団のことである。

主に王宮内の見回りと、来賓の護衛、王族室の警護などが仕事であり、騎士として優秀なものしか配属されないエリートコースである。


後継を降りたとはいえ公爵家の血筋、忖度が働いたのでは?と思うかもしれないが、国を守る要である騎士団である。

完全な実力主義社会であり、それは国王も推奨している。

平民から叩き上げで成り上がった方が現在、騎士団長として務めているくらいだ。


「まだ騎士団に入団されてから1年も経っていないのでしょう?お強いのですね」

「指導者に恵まれたのです。体力には自信がありましたが、入団当初はとても使い物にならず自分の非力さを痛感しました」


そんな取り留めのない話を少しした後、アルフレッドは改めて言った。


「アメリア嬢、新しい環境と訓練に明け暮れ、気付けば半年以上も貴方と顔を合わせるどころか連絡さえ疎かにしていた事、改めて謝罪させてください」


そう、申し訳なさそうに言いながら机の下に置いていた紙袋を差し出してきた。


「物で機嫌を取ろうという訳ではないのですが…久しぶりの再会に手ぶらと言うのも決まりが悪いかと思いまして…私は流行りのものに疎いので、先輩にアドバイスを貰いながら選びました。受け取ってくださいますか?」


「まぁ…わざわざありがとうございます」


そういえば最近会っていないなぁ、程度にしか思っていなかったので謝罪も不要であったが、貰えるものは貰っておく。

アメリアはそういう主義である。


婚約者と長らく不通であるのに、その程度にしか思わないのはアメリアの前世も関係しているのかもしれない。

酸いも甘いも噛み分けた達観した精神が、恋愛至上主義、恋愛脳、と言われるものを受け入れないのだ。

今世では初恋もまだだというのに、愛やら恋やらで胸をざわめかせるより、やりたいことや楽することに時間を費やしたいという、若者らしからぬ感性を持っている。


中を見てもよろしくて?と確認し紙袋を開けると、中からコロンと可愛らしい小瓶のハーバリウムが出てきた。淡いピンクや薄紫の花がメインの愛らしい配置のデザインである。


「この様な花を、私は初めて見ました。ハーバリウムというらしいですね。長く色褪せず枯れない花束として、今とても流行しているのだと教えてもらいました。とても沢山種類があったのですが、この花々がアメリア嬢にとてもお似合いだと思ったのですが…」

「えぇ、とても素敵です。私もいくつか作りましたが、このような可憐な花と配置は思い付かず…製作者のセンスの良さですわね」

「作り…?これを自作されるのですか?」

「?えぇ、そうですわ。ハーバリウムは私が企画開発し、特許を申請して…とは、ご存じなかった…みたいですわね…?」

「…………無知で申し訳ない限り…」

「あっ、いえ、責めているわけでは!」


渾身のプレゼントがまさかの特許保持者だったとは…と目に見えて落ち込むアルフレッドに焦り、アメリアは「あら、袋にまだ何かありますわね!こちらも見せて貰ってよろしいかしら!」と話を逸らすことにした。


中には持ち帰り用に開発した1人用の小瓶に入ったプリンケーキである。それがいくつか入っていた。


「こちらは、プリンケーキという新しいスイーツらしくて、今ご令嬢の間で人気なのだとか。アメリア嬢ももう食されたことはありますか?」

「……これ(小瓶タイプ)は食べたことありませんわ」


アメリアがそう答えると、アルフレッドは輝かんばかりの笑顔を見せてくれた。

ギリ嘘は言っていないから、とアメリアはその笑顔からそっと目を逸らしたのだった。




その日から週に数回、アルフレッドはアメリアに会いに来るようになった。

手土産に色々なスイーツを持ってきてくれるが、そのルーティンにプリンケーキも入っている。


その日、アメリアが意を決してプリンケーキの特許保持者であると言うと、とても驚いた顔をして「気を使わせて申し訳ない」と眉尻を下げて苦笑していた。


その後に続く言葉にアメリアは衝撃を受ける。

「王太子に言われていた意味がよく分かりましたよ。美しく聡明で商才もある、と褒めていらしたから。社交界でも話題にのぼりつつあるとか」

「え、そうなのですか!?」


なんてこったい、道理で最近、お茶会のお誘いや夜会への参加の有無を問い合わされるな?と思っていたよ…。

アメリアは心の中で頭を抱えた。


貴族令嬢として最低限の社交はこなしていたが、基本インドア派怠け者令嬢である。

気の合う友人達とのお茶会ならともかく、ナンチャラ派閥やらナンチャラ倶楽部やら、面倒な貴族の集まりは御免被る。


「結婚後は名ばかりの子爵位を貰うだけですので、アメリア嬢が望む通りに社交を続けてください。無理はしなくても大丈夫なので」


アメリアの内心を読み取る様にアルフレッドが言う。

その言葉にアメリアはキュンとした。


自分に貴族社会の腹の探りあいは無理だ、公爵の器ではない、とアルフレッドは常に言っていた。

本人曰く脳筋らしいが、人の心中を察する能力もあるとアメリアは思っている。

真の脳みそ筋肉人間なら「望まれたなら茶会でも夜会でも受けて立つべき!能力があるなら全力で!力こそパワー!」とか言いそうな所なのに。


ありがとうございます、とアメリアが答えるとアルフレッドはニコリと笑って

「しかし、情けない限りです。貴方の望む3食昼寝付きの生活をさせると約束したのに、どうやら今は私よりアメリア嬢の方が外貨を稼ぐ能力が高いようですね…。私も日々、精進しておりますが…」


しゅん、と仔犬のように悲しげに目を伏せるアルフレッドにアメリアの母性本能は爆発した。

どうやらアメリアはアルフレッドのこの表情に弱いらしい、と頭の片隅で思いながら。


「アルフレッド様!これは、本当にたまたま運が良かっただけです。断言します。私の本質は変わりませんわ。好きな事だけしてゴロゴロ怠けて過ごしたいのです!」


などと、いつかの日の様に、自慢にもならない主張をする。


しかし、実際本当にたまたま運が良かっただけだ。一生続く収入額ではない。ブームが去れば使用料も微々たるものになるだろう。だからといって、新たな流行を生み出そう!などとアメリアは思っていない。たまたま、やりたいこと作りたいものが今世の人々の琴線に触れただけだ。それ以上でも以下でもない。


ブフッ!!とアルフレッドが吹き出した。

「失礼…アメリア嬢…。」

「まぁ!笑うなんて失礼だわ!私は一生懸命に怠けていますのに!」

「一生懸命…ククッ…怠けて…ッッッ!」


笑っては失礼かと必死で笑いを堪えるアルフレッドの肩口をアメリアはポカポカと叩く。

鍛え上げた肉体に、非力なアメリアがダメージを与えられるわけもないので遠慮はしない。


「アルフレッド様が、私に好きなだけ怠けていいとおっしゃったから、一生懸命ゴロゴロしていますのに!」


完全に悪ノリである。何かしらのツボに入ったアルフレッドを笑い転げさせてやろうと、アメリアは全力で自身の怠け願望を言い続けたのだった。




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