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ママじゃない~攻略対象の母に転生したので、破滅エンドを潰します~  作者: めそこここ
恋蜜《こいみつ》は乙女ゲームより奇なり

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第29話 はじめちょろちょろ、なかパッパ。ポポ~ポ、ポポポ♪が止まらない

「問題は、どうやって興味を持たせるかだった。」


 早朝からお父様に呼び出された。完全にキャラ変した熱い男を目の前に、私は娘ではなく完全に部下だ。


「米を広めるなら、“食べてもらう”しかありません。」


「よし、採用!エリカ、服でも何でもいい。やってみなさい。」


(米の服って…。セリーナ叔母様の件、根に持っている。)


 お父様から制限なくやってもいいと言われた以上、あの二人に相談することにした。



 米の販促方法に悩み、私はトモエとブラッドを呼び出した。


「つまり、“米を一般家庭に浸透させたい”ってことね?」


 トモエは腕を組む。


「そう。食べれば分かるの。でも、まず興味を持ってもらわないと始まらない。」


「うーん。」


 トモエは炊き立ての白米を見つめる。


「私はパン派なのよね。」


「…は?」


 思わず聞き返した。


「いや、だって前世でも実家が小麦派だったし…。ちなみに、朝はトースト派。」


「えっ。」


 なんか今、世界の根幹を揺るがす発言しなかった?


「え、でもこの世界の米って、トモエが作った設定なんでしょ?」


 トモエは首を傾げる。


「いや、だって道端に生えてるじゃない?」


「……何が?」


 嫌な予感しかしない。


「米。前世でよく見なかった?空き地や道の端に。あれって、たぶん誰かが落とした米が発芽したやつよね。」


「それ、ノビエでは?」


「え?」


「「え?」」


 三人がお互いの顔を見つめながら沈黙。

 ブラッドが静かに口を開く。


「……トモエ。そんなところも可愛いよ?」


「え、違うの?」


「違う。」


 頭を抱えるトモエ。

 私はゆっくり遠い目になった。


(この世界の米、絶対その勘違いが原因じゃない……。)


 つまり、トモエは“米は雑草みたいに強い稲”だと思い込み、それが世界設定に反映されたということらしい。


「ちなみに、ゴムの木も?」


 恐る恐る聞く。


「ゴムの木っていうんだから、樹液がゴムになるんでしょ。」


「知識が雑!!」


 思わず叫んだ。

 ブラッドが深いため息をつく。


「ゲーム作る時、そんな細かい設定は確認しないが…。」


 この世界の創造主、残念すぎる。


「そ、それより…米よ、米!前世のスーパーマーケットみたいにすれば?」


 誤魔化すように、米の話に戻すトモエ。


「試食販売か。確かに誰かが立ち止まると、気になるもんな。」


「人が集まると、商品が“売れている”ように見えるのよね。」


 つまり――。


「試食販売をやるしかないって事ね。」



 数日後。ルフェラン領の広場には、妙な人だかりができていた。路上に運び出されたピアノ。その前に座るのはマリアだ。


 ポポ~ポ、ポポポ♪ポポ~ポ、ポポポ♪


 どこか中毒性のある旋律が、広場に延々と響き渡っている。


「…あの曲、何なんです?」


 本日も護衛という名目でついてきたリアンが若干疲れた顔で聞いてきた。


「販促音楽よ。」


「はんそく……?」


 意味は分かっていない顔だった。

 その隣では、大鍋で米を炊く私。 今やルフェラン領で“米炊き女”扱いである。


「はじめちょろちょろ、なかパッパ――」

「赤子泣いてもフタとるな!」


 レインが米を炊く私を応援するように元気よく続ける。

 すると近くの子供達も真似し始めた。


「はじめちょろちょろ!」

「なかパッパ!」


(なんで流行ってるの?)


 さらに隣では、エディがおにぎりを握っていた。 料理人だけあって、美しい三角形である。


「あなたも護衛として立ってるだけなら、手伝ってください。」


 エディがリアンにも握らせた。


「なんで潰れるんだ。」


 完成したのは、謎の白い塊だった。


「兄さんは一生家業から抜け出せませんね。」


 エディがリアンに耳打ちする。


「なにを!何個か作れば上手く出来るはずだ!」


(おにぎりで兄弟喧嘩しないで欲しい。)



 試食の準備も終わり、実演販売の開始だ。


「さぁ皆さん注目!本日ご紹介するのは、新食材“米”!」


 広場に響く、よく通る声。 人の視線を集める間の取り方も、商品の見せ方も妙に慣れている。


(……やっぱり上手い。)


 前世で見た実演販売員みたいだ。この役は、ウエインしかいないと思っていた。 前職は商店勤務。跡取り息子の嫉妬で、横領の冤罪を着せられ追い出された過去を持つ。 店の跡取りが危機感を抱くほど商才のあるウエインなら、上手くやると思った。――人を惹きつける“売り方”を知っている。


「どんな料理とも相性抜群!しかも腹持ちも良い!」


 人が足を止め始める。するとウエインは、わざと最前列の子供へ試食を渡した。


「ぼ、僕が先に食べていいの?」


「もちろん。美味しい物は、子供が一番正直ですから。」


 その一言で周囲の空気が柔らかくなる。


(完全に実演販売の才能あるわね、この人。)


 手際よく米をよそいながら、説明を続ける。


「炊き方の秘訣は、“はじめちょろちょろ、なかパッパ”!」


「なかパッパー!」


 子供達が盛り上がり、大人達は微笑む。


 ポポ~ポ、ポポポ♪ポポ~ポ、ポポポ♪


 マリアの販促音楽は止まらない。

 気づけば、広場には人だかりができていた。


「なんだあれ?白いパン?」

「いい匂い……。」


 一人が食べる。 すると、また一人足を止める。さらに人が集まる。


――作戦は、大成功だった。


 後日……米より先に周知されたのは、子供達が口ずさんだ「はじめちょろちょろ!」「なかパッパ!」という謎の掛け声と、 ポポ~ポ、ポポポ♪ポポ~ポ、ポポポ♪という謎の販促音楽だけが爆発的に流行することになる。



【あとがき】

ポポ~ポ、ポポポ♪ポポ~ポ、ポポポ♪

これに自作の歌詞をつけて、たまに口ずさんでいます。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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